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Zidonetです。
公益財団法人全国里親会
「里親だより」2018春号(第116号)より
http://www.zensato.or.jp/letter/4459
平成28年に改正された児童福祉法では、子どもが家庭で養育できない場合は
それに代わる家庭を用意することとしています。
また、昨年8月に取りまとめられた「新しい社会的養育ビジョ ン」においても、
乳幼児を中心に施設養護から里親などによる養育にシフトする計画が盛り込 まれています。
そこで、どうしたら里親を増やすことができるかが喫緊の課題となっています。
里親開拓のために参考になる調査データがこのほど日本財団から発表になりました。
調査名は『「里親」意向に関する意識・実態調査』(2017年11月実施)。
里親になりたい人は社会にどのくらいいるのかなどを調査したものです。
調査の概要をご紹介します。
どうしたら里親を増やせるか、を考える
「里親」意向に関する意識・実態調査
はじめに
この調査の目的は、今後の日本における里親意向を
高めるためのヒント(特にコミュニケーション戦略) を導き出すことが狙いです。
そして、
①里親意向のあ る人はどんな人なのか、
②里親意向のない人が意向あ りになる、
あるいは里親意向のある人が実際に里親に なるには、
どのようなコミュニケーション戦略が必要か、などを調べました。
調査は2つ行われています。
①本調査:全国20代〜60 代の男女を人口構成比に合わせて10,000サンプル回収、
②サンプル調査:全国30代〜60代の男女で、里親にな ることができる属性に合致する
1,500サンプルを回収(里 親意向あり700サンプル+里親の意向なしから800サン プル)。
サンプル調査では、里親制度などを説明したうえ で意向のあるなしがどう変化したかなどを聞いています。
里親の知名度
まず、里親という言葉を聞いたことがあるかどうか を聞いています。
里親という「名前は聞いたことがあ る」は4割程度で最も多く、
「内容をある程度知ってい る」は3割。
「よく知っている」は1割未満という結果 になりました。
8割弱が里親について知っていると答え ています。
さらに、里親経験者がどのくらいいるか聞いたところ、
「里親を過去にやったことがある人」は全体の2%未満。
里親意向
「里親になってみたい」「どちらかと言うと里親になっ てみたい」人は6.3%。
明確に「里親になってみたいとは思わない」人が60.0%という結果です。
意向者のうちで「すぐにでもなってみたい」人は1 割強。
意向があるとはいえタイミングや条件が整わないと実施には至らないようです。
里親意向者のうち実際に里親登録する人がどのくらい いるかは不明ですが、
一般に3〜4%といわれています。
里親のイメージ
里親のイメージについては、「どちらともいえない」 が5割。
大半の人が良くも悪くもないイメージです。
しかし、良いか悪いかで聞くと「良いイメージ」が4 割を占め多めとなっています。
良いイメージを抱いて いるのは20代の女性。
養子縁組と里親を混同している人は約3割。
男性では「特に何も浮かばない」との回 答が多くありました。
里親をする人のイメージは「経済的に余裕がある人、子どもが好きな人」が5割台。
次いで「実子がいない」「世話好き」「社会貢献に熱心」などが続きます。
また、里親に委託される子どものイメージは「幼児」「乳児」「小学生」などが多く、
次いで「助けが必要な子が多そう」「傷ついている」「心を閉ざしている」など
特殊な環境で育っ てきた背景を感じさせる項目が続きます。
里親意向の理由
里親意向者の意向理由は「家庭を必要とする子ども を助けたい」が7割と圧倒的に高くなっています。
3位に「社会的貢献がしたい」が上がっており、
意向者の意識としては「子どもを助けて社会のために貢献したい」 という意識が強いようです。
2位は「子どもが好きだから」。
性別と年代でみると「女性・30〜40代」で「子育てをしたい」「実子がいない」が高め。
「男女・60代」 では「実子の子育てが終わった」「自分にもできそう」「時間・経済的に余裕がある」が高めでした。
里親意向者、非意向者ともに、ハードルとなっているのは
「経済的負担が心配」「子どもの人生を左右するので責 任が重い」
「預かった子どもが大きくなるまで自分が健康でいられるかどうかわからない」といった、
負担感が上位 に上がっています。
また、「里親制度についてよく知らない」 「どこに相談すればいいのか分からない」といった、
里親 制度に対する理解度の低いことも要因になっています。
受け入れたい子どもの年齢については「乳児」が4 割でトップ。
次いで「幼稚園児・保育園児」が2割強と続きます。
受け入れたい子どもの年齢上限としては「小学校低学年」が3割弱でトップ。
次いで「幼稚園児・ 保育園児」(2割弱)と続きます。
子どもの受け入れ期間については「特に問わない」が半数以上となっています。
里親意向と属性の特徴
意向者の属性は「男性」「未婚」「子どもがいない」 の比較的若年層や高所得者、時間のある人、です。
意向者の居住環境は「中核都市」「郊外都市」に住む 人が多く、
住居種別や間取りは意向の有無とは関連が ありませんでした。
意向者の職業や経歴では「会社員」で、同居人が「福祉職」や「信仰」経験のある人がやや多くなっています。
意向者の心理学的属性では「社会や地域に役立つ人 生を送りたい」と考える人が非常に多くなっています。
里親を何で知ったか 里親についての認知経路として多いのは「テレビ番組」 (67.3%)で、
これから里親をPRしていくにはテレビ は欠かせないメディアといえます。
また意向者の特徴は 非意向者に比べて「新聞」「インターネットのニュース サイト、ニュースアプリ」
「本」「雑誌」「インターネッ トの行政関連(児童相談所等)のホームページ」のスコ アが高く、
情報感度の高い人が意向者に多いといえます。
里親意向のきっかけは「テレビ番組」が6割と、認知経路同様有効なメディアとなっています。
「テレビ番組」は、里親意向のある男性30代で高くなっています。
「新聞」は男女60代と高齢層で高めとなっています。
里親に興味を持ったきっかけでは、テレビ番組などで、
里親の心情にフォーカスしたものや実子がいるなかで新たな家族が形成されるストーリー。
そのほかでは、社会問題として「育児放棄」を取り上げたドキュメンタリーや
実際に里親になった人の体験談もあります。
意向に関する変容メカニズム
「現在の里親制度の内容」などの情報を提供することによって、
意向度合いが高まったり、反対に意向度合いが低くなったりします。
情報提供によって意向者を 増やしたり、意向低下を食い止めたり、
非意向者を意 向者にすることができるといえます。
「意向あり」を上昇させるためには、
①ターゲットの 明確化、
②訴求内容・コンタクトポイントの理解を考慮 してコミュニケーション戦略を立てることが必要、です。
現状意向者(里親に関する情報を提供する前)の特 徴としては、20代30代の男性が多く、
会社員で子ど もがいないか少なめ。
可処分所得、可処分時間が多く、 居住エリアは都会。
価値観としては
①社会や地域に役 立つ人生を送りたい、
②子どもを育てることは生きが い・喜び・希望である、
③活動的・行動的に人生を送 りたい、
④モノではなく心が豊かになる人生を送りた い、
⑤子育てを通じて人間関係が広がる、などでした。
里親は「やりがいがありそう」「楽しそう」といった里親イメージが意向を分けるポイントとなるようです。
また、これに加えて「社会や地域に役立つ人生を送りたい」 「里親は人間的に成長できそう」
「里親は社会貢献できそ う」といった自分のための側面も重要視しています。
里親意向者で価値観や里親イメージ以外では「経済状況(可処分所得が高い)」や
「情報感度(新聞や本を 読む)」が影響しています。
里親をやってみたい理由は、全世代共通なのは「家庭を必要としている子どもを助けたい」。
30代の男性 は「純粋に子どもが好き」。
女性30代・男女40代は「実 子がいない」「子どもを助けたい」「子育てをしたい」。
男女50代から60代は「子育てが終わった」「時間に余裕ができた」で、
特に60代になるとこれらに加えて、「子どもを助けたい」「自分にもできそう」が加わります。
意向のある人に、日本では里親を必要としている子ども たちが沢山いることや里親に対するサポートの内容、
子どもたちのイメージを提供した後に、再び意向を尋ねると、 情報提供によって里親意向ありの一部が非意向者になり、
意向なしの一部が意向ありになったりしましたが、
全体で みると「里親意向あり」の6.3%は12.1%に上昇しました。
情報提供によって里親意向が上昇したのは、
当初「子 どもが大きくなるまで健康でいられるかわからない」
「実子との関係が悪くなりそう」「どこに相談すればい いかわからない」と思っていた人たち、です。
一方、情報提供によって里親意向が当初よりダウン した人は「続けられる自信がない」
「仕事や生活への負 担が心配」「子どもの人生を左右するので責任が重い」 などで、
やってみたいとは思ったもののよく考えると 負担が多いように感じたためと思われます。
情報提供による意向変容者をみていくと、
意向がアッ プしたのは「子育てで忙しく、時間やお金があまりな い30代から40代の女性」です。
逆にダウンしたのは「60 代女性と30代男性」。
意向のアップした人のハードルとなっているのは
「実子の子育てが終わっておらず、実子との関係が気になっ ている」
「預かった子どもが大きくなるまで自分が健康 でいられるかわからない」といった項目です。
どうすれば里親意向を高められるか
里親意向と強い相関関係にある項目は
「家庭環境の 中で、子どもの健全な成長を促すための制度である」
「他 人の子を家庭で育てる制度である」でした。
里親意向者が望むこととしては「家族・親族・同居 人の理解が得られれば」
「気軽に相談できる場所・相手 がいれば」でした。
里親意向者の知りたいこととしては「子どもの写真提示」
(この調査では、大阪家庭養育促進協会の行っている新聞での募集を参考に提示している)でした。
里親意向者が興味を持った里親制度の内容としては
「養育費・里親手当てを得られること」「マッチングの 相談に応じてくれること」
「里親不足の現状」を知ったことが意向をアップさせました。
里親意向者がさらに知りたい情報としては「精神的 サポートの内容」
「具体的ななり方」「体験談」「子ども のプロフィール」でした。
里親意向を弱める里親制度の問題点としては、
「現状、リクルート、研修、支援などを一貫して担ってくれる機 関がない」
「行政の担当職員が経験不足のことがある」「大 学進学費用のサポートはない」といった
窓口・金銭的サ ポートの不足をあげる人が7割から8割に上っています。
「誰に?」「何を?」「どのように?」伝えるべきでしょうか。
「誰に?」ということでは、
①現状意向者は20代30代の 男性。社会貢献性、向上意欲など高い意識を持っています。
里親に関して持っているイメージは「楽しそう」「やりがいがありそう」。
可処分所得・時間があり、情報接触頻度が高 い。
②意向アップ層(情報提供によって里親非意向者から 意向者に変容する人)は30代40代女性。
子どもや子育て が嫌ではない。時間やお金があまりない。
実子の子育てに 忙しい、といった人たちです。
③意向ダウン層(情報提供に よって里親意向者から非意向者に変容する人)は60代女 性と30代男性。
子どもの人生を背負うことに対する心理 的負担、仕事や生活への負担が心配、などとなっています。
「何を?」ということでは、①現状意向者と②意向アップ層には
「里親を必要としている子どもたちの実情」「具体的な 里親のなり方・留意事項」
「気軽に相談できる場所や相手がい ること」が有効なコミュニケーション内容となっています。
「どのように?」ということでは、
①現状意向者と②意向アップ層にはテレビでのコミュニケーションが有効。
コンテンツとしては実際の成功事例など、ハッピー 体験を提供することで「子どもを助けたい」
「里親は楽 しそう・やりがいがありそう」といった気持ちを高め ることがポイントになっています。
意向ダウン層へのコミュニケーション戦略は難しい ですが、里親に興味を持ってはいるので、
潜在的な意 向者ととらえることはできるでしょう。
経済的サポートと里親意向の関連
養育費や里親手当てがでることを具体的に金額まで示して再度意向のあるなしを聞いたところ、
「意向あり」 の68.6%が、また「意向なし」の20.6%が経済的なサ ポートに興味を持っていることが分かりました。
里親意向者で経済的サポートがある場合には「モノではなく、心が豊かな人生を送りたい」かどうか。
また、 里親意向なしの人で経済的サポートがある場合には「子 育てをすることで人間的に成長することができる」が 関心項目になっています。