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【コロナ禍で考える虐待の原因~あなたも“絶望”していませんか?~】
2020年11月に発表された報告によると、
2019年に児童相談所が虐待として対応した件数は全国で19万3780件となり過去最多を更新しています。
さらにコロナウイルスの感染を防ぐための外出自粛などが始まった2020年1月からの半年間では
この件数が9万9千件を超えており、過去最多だった前年を超える勢いで虐待が報告されています。
これは日本だけではありません。
世界中で虐待が増加していることが報告、もしくは予想されています。
その一つの原因として考えられるのは、経済的なストレスです。
アメリカのノースカロライナ州ダーラムに本部があり、
常に全米総合大学ランキングのトップ10に名を連ねている世界屈指の名門である
デューク大学のアナ・ガスマンパインズ准教授の過去の調査によれば、
失業率が高まると児童虐待の件数が増える、もしくは深刻になるという結果が出ています。
現在の日本でもコロナ禍によって社会の動きが変わり、仕事や給与、働き方などに大きな変化があった人が多くいます。
そして様々な変化が積み重なった結果、大人も子どもも今までに経験したことがないほどのストレスにさらされており、そ
れは家族との関係や自分の言動に直接悪影響を与えています。
ではこのコロナ禍の中でなぜ多くの人が子どもを“虐待”してしまうのでしょうか?
【保護者が迎える限界と、エスカレートしがちな行動の理由とは?】
まず考えたいのは保護者が受けているストレスの影響と、それが与える子どもに対する態度の変化です。
というのも以前からお伝えしているように、虐待が起きた時に助けを必要とするのは子どもだけではないからです。
まずは、その親が助けを受ける必要がある場合が非常に多いのです。
【保護者の限界】
虐待の報告の増加と共に、心理カウンセラーに相談に行く保護者が増えているということも報告されています。
相談内容は、「以前は絶対に手を上げなかったのに、今年に入ってから子どもを叩いてしまうことが多い」というものや、
「子どもにいうことを聞かせることやワガママへの対応など、以前はそれほど大きなストレスと感じていなかったことが
今ではパニックになるほど大変で、このままでは子どもを虐待してしまいそうで不安だ」というものが多いということです。
このような相談を受けた時に状況を聞いてみるとほとんどの人は、
配偶者はテレワークで忙しく家事を手伝う時間がない、
子どもは学校や保育園が休みになっているためにいつも家にいるだけでなく「外で遊びたい」と騒ぐ、
そのうち家の中で暴れだして手が付けられない、配偶者に相談しても「我慢するしかない」としか言わない、
外出自粛要請から自治体の相談窓口などにも行きづらい…
このような状況だったそうです。
つまり、多くの保護者は今「出口の見えないトンネル」の中にいるように、
希望の持てない不安な状況で人知れず“限界”を迎えているのです。
このように将来に希望が持てなくなった状況のことを表す適切な言葉があります。
それは何だと思いますか?
【絶望した結果としての虐待】
辞書を引くと分かりますが、希望の持てない状況は“絶望”という言葉で表されます。
多くの保護者の皆さんはこのコロナ禍で“絶望”しているのです。
そして、その結果として精神的なバランスを失い、家族や子どものことなど構っていられずに“自分勝手”に行動せざるを得なくなり、
果てには子どもに対するいら立ちがエスカレートして虐待にあたる言動にまで発展してしまう可能性も少なくありません。
実際に今の世の中にはこの“絶望”という感情は社会全体に広がって共感を呼んでいます。
独断と偏見による一例ですが、2020年に日本中で大ヒットしたアニメ「鬼滅の刃」とか、
紅白歌合戦にも出場したYOASOBIというアーティストの「夜に駆ける」という歌の内容を考えてみてください。
内容をご存知の方であればどちらにも“絶望”というキーワードが含まれていることにお気付きになるでしょう。
流行りのものを探せばきっと他にも同じテーマを扱ったものは沢山あるに違いありません。
このように様々な社会現象からも現在の保護者や子どもたちが置かれている状況について考察することができるのは興味深くもありますが、
浸透しているメッセージがあまりにもネガティブであるゆえに恐ろしくもあります。
【どこまでが虐待なのか?】
このような状況が多く見られる中、政府や行政も手をこまねいているわけではありません。
保護者や子どもたちをさらに守っていくために様々な対策を講じています。
例えば2020年4月1日に「改正児童虐待防止法」と「改正児童福祉法」が施行されました。
この改正では親による体罰禁止の明確化や児童相談所の体制強化が盛り込まれています。
また、合わせて厚生労働省から発表された運用指針には
「どこまでが虐待に当たるのか」が具体的に示されている点は非常に評価できるポイントです。
これによって保護者も、他の人も行われているのが虐待行為なのかどうなのかを客観的に判断できるようになるからです。
その中ではまず「子どもに苦痛を与えるものは体罰である=虐待に含まれる」と明確化されています。
さらに体罰ではないものの、「怒鳴りつけたり、子どもの心を傷つけたりする暴言も子どもの健やかな成長・発達に悪影響を与える可能性がある」と指摘しています。
また、「子どもをけなしたり、辱めたり、笑いものにするような言動も子どもの心を傷つける行為であり、子どもの権利を侵害する行為」としています。
保護者の皆さんがこれらのポイントをはっきり理解しておくなら、
どの時点でバランスを崩しているのかが分かりやすくなりますので、
ぜひ余裕のあるうちにしっかりと理解しておくようにしましょう。
さらに児童相談所が保護者をさらに支援できるように、
「児童相談所の一時保護など介入対応をする職員と、保護者を支援する職員を分け、介入機能を強化する」という事項も盛り込まれていますし、
「児童相談所には医師と保健師を配置する」という点も新たに付け加えられています。
これらがしっかりと施行されれば、保護者の皆さんをサポートする上でさらに多くのことができるに違いありません。
時間はかかりますが、社会全体で子どもを育むための取り組みは進んでいるのです。
【まとめ】
コロナウィルスのパンデミックによって、社会全体が変わりつつあります。
私たち児童福祉に携わる人間は子どもたちも、保護者の皆さんも虐待の被害から守りたいと思っています。
ですから、もし行き詰ってしまった時、限界だと思った時、先行きが見えず絶望してしまった時、
どうか自分だけで抱え込まずに自治体や児童相談所、専門機関へご相談ください。
そしてわたしたちNPO法人全国児童福祉支援ネットワークにできることがあれば、
出来る限り、あなたの力になりたいと思っています。
「監視社会」ではなく、「支え合う社会」を。
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