Zidonetブログ
ZIDONET BLOG
ZIDONET BLOG
Zidonetです。
前回、日本の子どもたちを取り巻く「児童虐待」の
現状について皆さんと一緒に考えてみました。
では、虐待をされた子どもは、
どうなってしまうのでしょうか。
【虐待された子どもは、どうなってしまうのか】
皆さんは、“サイコパス“という言葉を知っていますか?
最近ではテレビドラマなどでも取り上げられているので
聞いた事がある方も多いかもしれません。
これは極めて特殊な人格を持つ人々のことを指す心理学用語です。
そして彼らの主な特徴とは「感情の一部が欠けている」ことであると言われます。
では彼らは生まれつきそうした人格を持って生まれたのでしょうか。
ノルウェー科学技術大学のアイナ・ガルホーゲン氏の研究などにより、
幼児期に受けた虐待とサイコパスには
非常に密接な関係がある事が明らかになってきました。
つまり、サイコパスなどの人格障害は
虐待によって“人為的に作りだされてしまう”可能性があるという事です。
… …
児童虐待について一般の方にも広く
知っていただきたいという想いから、
少し過激な書き出しをしてしまいました…。
文章に嫌悪を抱かれた方、
申し訳ありません。
しかし、
厚生労働省の資料によると、
虐待などを理由に社会的養護を必要とする子どもたちの中には、
全体的に障害などのある子どもが増加している状況が明らかに見られます。
現在、
里親のもとで暮らす子どもの24.9%に、
児童養護施設で生活する子どもの36.7%に
身体虚弱、外傷後ストレス障害(PTSD)、
反応性愛着障害、注意欠陥多動性障害(ADHD)、
などを含む何らかの障害があり、
その総数は年々増えています。
これらの統計からみると、
児童虐待と発達障害との関連は、
簡単には否定できないと言えるのではないでしょうか。
※資料:厚生労働省子ども家庭局家庭福祉課
「社会的養育の推進に向けて」令和2年4月
↓↓
【虐待されるとどうなるのか?】
今回は、虐待を受けると子どもの身体や精神に
どんな影響が及ぶのかを考えていきたいと思います。
【子どもへの破壊的な影響】
虐待を受けた子どもには、
基本的に共通して「自尊心の欠如」が見られると言われます。
「自尊心」とは字の通り、
「自分を尊重する気持ち」の事です。
「自信」や「プライド」という言葉と
同じように使われることがありますが、
虐待された子どもが得る機会を失ってしまった
自尊心はもっと奥深いものだと言えます。
人間としての尊厳の事なのです。
例えば、
小さな頃から親に
「おまえなんか生まれなければ良かったのに」
「お前は邪魔なんだ」
「自分がお前に暴力をふるっているのは、お前が悪い子だからなんだ」
などと言われ続けて、
一度も親から褒められた事も、
抱きしめられた事もない子どもについて考えて下さい。
子どもにはそれが間違っている事など理解できません。
親の言う事が全てだからです。
誰かに愛された事がない子どもが、どうして
自分自身を愛して大事にする事ができるでしょうか。
はたまた、他者を大切に思う事ができるでしょうか。
「悪いのは全て自分なんだ」と思いながら
今まで生きてきてしまった子どもの心の奥には、
“安心や喜び”ではなく、
“悲しみと怒り”が渦巻いています。
「自分を愛せない」という事は、
「人を愛する事ができない」という
意味でもあります。
そして、
愛情を知らないまま
体だけ成長していく事につながります。
【虐待を受けた子どもの特徴】
では、虐待を受けた子どもの心の傷は
どのように“外“に現れる事があるでしょうか?
これから、虐待を受けた子どもに見られる
いくつかの障害について考えていきたいと思います。
もちろん、統計的に見られる事例であり、
虐待を受けたすべての子どもに当てはまることではない、
ということをご承知おきください。
1 愛着障害を持っている
医学的・心理学的に様々な意見があるために、
はっきりと定義する事が難しいようですが、
一般的には保護者との愛情の交流がない場合におきる障害の総称を
“愛着障害”もしくは“愛情アタッチメント障害”と呼ばれています。
この障害を持つ子どもたちの多くは非常に警戒心が強く、
親密な人間関係を結ぶことが難しいと言われます。
過敏な反応や衝動的な行動も特徴で、
愛情表現を示すことや責任感をもって行動する事などが苦手です。
また他の人との距離感をつかむのが苦手で、
特定の人と親しくなる事ができないにも関わらず、
見知らぬ人にもベタベタするという傾向も見られます。
2 嘘をつく
虐待を受けている子どもは日常的に、大人から見て
「嘘をついている」と取られる行動が多く見られる場合があります。
なぜでしょうか?
そうしなければいけない環境で育ってきてしまったからです。
例えば、
幼い頃から親に嘘を強要されている場合があります。
周囲の人に虐待されている事を隠すためです。
また、嘘を強要されていなくても、
自分の境遇について他の人に知られる事を恥ずかしく思って隠すためや、
保護者の言動に一貫性がない場合などに親のご機嫌をとるために
嘘をつく場合もあります。
このように嘘で自分の事を飾らないと
他の人との関係を築く事ができない子どもたちは、
嘘をつかずに生きていくことが難しくなってしまいます。
そして、ついには嘘と本当のことの区別さえ
つかなくなってしまう・・・という場合さえあります。
3 自傷行為
鹿児島大学の研究によると、
子どもの時に虐待を受けた事がある人は
自傷行為を行うリスクが約9倍になるそうです。
虐待を受けて育ってきた子どもたちは、
心に大きな傷を負っていますが、
大きすぎる心の傷は“痛み”を感じるものではなく
“無感覚”になっていく特徴があります。
ですから、そのような子どもは
自分で自分を傷つけて“身体的な痛み”を感じたり、
リストカットなどをして自分から血が流れていくのを
見たりして初めて「生きている」という事を感じるのです。
また、怪我をすると他の人から心配してもらえる、
優しい言葉をかけて貰えると思い、
自分に注目を集めるために自傷行為を繰り返す場合もあります。
4 凍てついた眼差し/凍り付いた瞳
このような題名の書籍も発表されていますので、
聞いたこともある方もいると思います。
これは簡単に言うと感情の表出がない、
もしくは非常に抑圧されている状態のことを言います。
非常に幼い時から何かを表現したり、
感情を行動に表したりするたびに親に虐待されてきたので、
それが危険な事だと学習してしまうのです。
安全に生きるためには、
何も感じてはいけない、何にも好奇心を持ってはいけないと
自分を抑え込んで成長した結果、
機械のような反応しかできない人になってしまうのです。
5 他者へのいじめ・動物虐待
先ほども虐待を受けた子どもの心には
“怒り”“悲しみ”“不満”などが渦巻いている事に触れましたが、
自分より弱い人や動物をいじめる事が
それらの感情のはけ口になってしまう場合があります。
またそのような子どもたちは、
自分の行っている事が他の人の感情に
どのような影響を及ぼすかが分からなかったり、
または逆に他の人が過剰に反応を示す事が
楽しかったりするので行うという可能性もあります。
【成長と共に傷はいえていくのか?】
虐待の影響は、体の傷と同じように
成長や時間の経過と共に自然に無くなっていくのでしょうか?
その答えはNOです。
虐待された子どもは、大人になっても自尊心が
欠如しているままだったり、
何かを決める事が出来なかったり、
子どもを持ったときに自分の子どもを虐待してしまったりと、
いつまでも生きづらい問題を抱え続けます。
子どもの頃に身体に重度の障害を
負った子どもの事を考えてみて下さい。
その子は将来何もなかったかのように
生活できるようになるでしょうか?
もちろんそうなって欲しいのはやまやまですが、
多くの場合大人になっても障害と戦っていく必要があります。
では虐待について話を戻しましょう。
子どもが虐待を受けると、
いわば脳に障害を持つようになります。
自然に治るでしょうか。
やはり大人になっても障害と戦い続ける必要があるのです。
もちろん、そうした自分の過去と向き合いながら、
色々な人たちの力を借りながら、
懸命に立派に生きている方はたくさんいます。
完全に過去をなかったことにはできなくても、
自助・共助・公助の力で、
その影響を軽減することはできると考えます。
【まとめ】
今回は、子どもの頃に虐待を受けた人の特徴の
ほんの一部を考えてきました。
実際のところ、
彼らがどれほど難しく辛い状況に直面しているかは、
彼ら自身にも周囲の人にも完全には理解できないものかもしれません。
そして、
その悪影響は生涯にわたって続きますし、
さらには子どもを持った時に今度は
自分が虐待の加害者になってしまう…という事もあり得るのです。
子どもを虐待するという事が単なる一時的な暴力ではなく、
子どもの成長を妨げる破壊的な行為だという事が
今までよりもう少しご理解いただけると幸いです。