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【里親がこれほど必要とされているのはなぜか?】
里親がなぜ必要なのかを知るために、皆さんに考えて欲しい質問があります。
「皆さんの周りにいる子どもたちは幸せそうですか?」
なぜこんな質問をしたかというと、今年ユニセフ(国連児童基金)が実施した、
子どもの幸福度をはかる調査の結果を見たからです。
先進国や新興国38カ国中、日本は総合20位でした。
あまり良いとは言えない結果ですね。
でも注目して欲しいのはその調査の内容です。
この調査は
(1)身体的健康、
(2)精神的幸福度、
(3)学問などの能力をはかる「スキル」
の3つの分野に分かれており、
それぞれの日本の順位は以下のとおりです。
(1)身体的健康 … 1位/38カ国
(2)精神的幸福度 … 37位/38カ国
(3)スキル … 27位/38カ国
体の健康は1位なのに、心の健康ともいえる「幸福度」は
下から2番目という驚くべき結果です。
つまり、今の日本の子どもたちは
「体は非常に元気だが、心は全く元気ではない」
と言えるのかもしれません。
これがなぜ里親と関係しているのか?
と疑問に思われた方もいるかもしれません。
その答えを知るために
(3)スキルの調査結果をさらに
紐解いて説明していきたいと思います。
(※この記事では里親を必要としている
子どもたちのケースについて考えていきます)
この記事を読めば、なぜ里親の役割が子どもたちの
幸福度に関係しているのかがわかるかも知れません?
ユニセフによる調査の詳細は以下をご覧下さい。
「レポートカード16」
先進国の子どもの幸福度をランキング
日本の子どもに関する結果
↓↓↓
https://www.unicef.or.jp/report/20200902.html
【里親が子どもに手渡すことができる、子どもに必要なモノとは?】
子どもが持っている能力や価値観のほとんどは、親の影響を受けて形成されていきます。
ここからは里親が子どもたちにどんな影響を与えることができるのか、について考えていきたいと思います。
【必要なのは社会的適応力】
先ほどのユニセフの調査の(3)「スキル」の調査結果をもう少し考えてみましょう。
38カ国中27位という結果になっていますが、調査の説明を見ると「学問の能力」が低いのではなく、
「社会的な適応力」が低いことが順位を落としている理由だと説明されています。
社会的な適応力を正確に説明することは難しいのですが、この記事の中では次のように考えたいと思います。
「子どもたちが他の人との信頼関係を築き(社会)相手のために何かしてあげることで満足感を得る(適応し貢献する)能力」
子どもにとっての「社会」とは、まず家族であり、次に友達や学校です。
その中でも、家族は全ての人間関係の基盤ともいうべき大切な社会です。
その中で信頼関係を持ち、満足感や幸福感を得ることができていない子どもたちが
突然、他の社会の中でうまくやっていくことができるでしょうか?
残念ながらそうできる可能性は低いと言わざるをえません。
社会的な適応能力が低い子どもが多くなると、精神的な幸福感も低くなるに違いありません。
そして、精神的に幸福でなくなると自殺という悲しい行動に走ってしまう可能性も高くなるのです…。
この調査は、コロナウィルス感染拡大の前に行われていますので、現在はもっと深刻な状態になっているかもしれません。
ですから、この問題は現在、様々な理由で実の親と暮らすことができず、
施設などで生活しなければならない状況にいる約4万5千人以上の子どもにとっても、
まさに近い将来、もしくは現在進行形で直面する、している問題と、言えるかも知れません。
そのような子どもたちにとっての希望が「里親」です。
というのは、子どもたちが里親の家庭で生活することによって、
この「社会的な適応能力」を身につけるための道が開かれるからです。
では里親はどのように子どもたちを助けていくことができるのでしょうか?
【里親によって「愛されているという安心感」を得られる】
里親の役割の中でも非常に大きいのが
「愛着関係(アタッチメント)」を形成することです。
これは、子どもが里親(養育者)との間に結ぶ感情の絆のことで、
非常に強い安心感や信頼感と言い換えても良いかもしれません。
つまり、先ほど考えた子どもの「社会的な適応力」の中の
「他の人との信頼関係を築く」という部分を育む上で
里親は、とても重要な役割を果たすことができるのです。
では、里親のもとに行けずに施設で過ごす子どもたちは
この「愛着関係」を持つことができないのでしょうか?
様々な努力が払われていますので不可能とは言えませんが、
やはり限界があることは否定できません。
これは主に施設という仕組みの限界です。
というのは、どんなに施設の職員が愛情や熱意を持って
子どもたちに接していたとしても、24時間一緒にいるわけにはいきません。
対応しなければならない子どもの数も多いですし、
職員は時間ごとに交代しながら勤務しています。
それで、子どもたちが同じ職員と十分な時間をかけて
愛着関係を持つことは現実的に難しいのです。
現在、国を挙げて、児童養護施設などの施設の小規模化を図り、
より家庭的な養育ができるよう整備が進められている理由の1つがこれです。
里親の場合はどうでしょうか。
里親は、限りなく家庭に近い環境で、特定の大人が子どもと一緒に居ることができますし、
その子の状況に合わせて、十分に愛情と時間をかけて愛着関係を築くことができます。
子どもとって一番重要なのは、養育者が自分といつも一緒に過ごしてくれることなのです。
このようにして子どもは「大人を信頼すること」を学んでいきます。
そして自分は愛されている、大切にされているという感覚の上に、
さらに大切な意識を持つことができるようになります。その意識とは何でしょうか?
【子どもには「自分には価値があるという自尊心」が必要】
里親の愛情を十分に受けたり、時には真剣に叱ってもらったりして大切に育てられた子どもたちは、
正しい「自尊心」を持つこともできるようになります。
「自尊心」とは、自分は価値ある存在であるという意識のことであり、自分を大切にする心のことです。
これは単なる自意識やプライドが高いこととは違います。
この自尊心が高まると、社会の中の他の人への接し方も変わっていきます。
自分の価値を認められるので、同じように他の人の価値を認めたり、
感謝したり、その人のために何かしてあげたいと思えるようになります。
自分の価値を低く見て、
「そうしないと相手に嫌われるから…」とか、
「自分には価値がないから他の人を優先させて当然だ…」
などというネガティブな気持ちから貢献するのではなく、
純粋に相手のことを気遣い、相手のために何かしてあげたいと思えるようになるのです。
こうして「社会的な適応力」の次の部分、「相手のために何かしてあげることで満足感を得る」
ことが出来るようになっていきます。
この健全な自尊心を持てた子どもたちは、積極的に新しいことにチャレンジするようにもなり、
家庭の外にも自分の社会を作っていけるようになります。
つまり友だちを作り、学校でもうまくやっていき、さらには、将来もっと大きな社会に出ても
力強く生きていくことができるのです。
そして、どんな社会の中でも安心して自分らしく生きることができるようになります。
こうして子どもの精神的な「幸福度」は上がっていくのです。
※あくまでも、基本的な考え方のお話です。
私たち自身も日々悪戦苦闘する、「子育て、そんなにうまくいかないよ~」のお話は、
また別の機会に…(笑)
【まとめ】
今回は、里親がどれほど重要な役割を果たしているのか
をご紹介してきました。
様々な理由で親と一緒に過ごすことができない子どもにとって
里親と一緒に過ごすことがどれほど必要なのか、
そのほんの一部を説明させていただきました。
現状ではまだまだ里親家庭は不足しており、多くの子どもたちは施設で暮らしています。
私たちは、少しずつでも里親が増えるように、
各関係機関と連携を取りながら、活動していきたいと思っています。
次回は里親と同じような目的を持つ
「ファミリーホーム」についてご紹介していきます。