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里親とは何か。~里親及びファミリーホーム養育指針「第1部 総論」②~

Zidonetです。

 

里親及びファミリーホーム養育指針「第1部 総論」①

に続き、総論の後半を出来る限り分かりやすく説明したいと思います。

 

 

 

 

 

 

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里親・ファミリーホームの役割

 

「里親」は保護を必要する子どもを養育することを希望する人で、

その役割を果たすことができると認められた人のことをいいます。

 

そして「ファミリーホーム」とは、

里親として子どもたちの養育経験を十分に持っている人が、

もう少し多くの子どもたちを基本的に自分の家で養育することをいいます。

 

イメージとしては、

「里親」=普通の家族、「ファミリーホーム」=大家族という感じです。

 

詳細を省いて言うならば、規模が少し違うだけで、

どちらも自分の家で子どもたちを養育するという点では違いはありません。

 

子どもたちが「大切にされている」、

「生まれてきて良かった」と感じられる、

 

つまり人間として「あたりまえで安心できる生活」を

送ることができる環境を提供するという非常に重要な役割を果たしていくことになります。

 

 

そして里親やファミリーホームは子どもたちの「家」であるだけではなく、

地域に密着して「社会全体として」子どもを育むための拠点でもあり、

 

子どもたちが社会とのつながりを持つための「窓口」になるための場所です。

 

つまり、

 

里親とファミリーホームがきちんと役割を果たすためには

社会の支援、社会とのつながりがあることが大前提となっています。

 

決して、里親やファミリーホームは

社会から独立した場所になってはいけないのです。

 

ですから、里親やファミリーホームは常に厚生労働省に属する

児童相談所や医療機関、教育機関、里親会の仲間、

同じ地域に住んでいる様々な人々とのつながりを大切にし、

共にチームを組んで子どもたちをサポートするための応援団を形成していきます。

 

 

そして子どもたちが成長し、自立し、社会へと巣立っていった後も

里親やファミリーホームの役割は終わったわけではありません。

 

なぜなら、子どもたちにとって「実家」のような、

帰ることができる家となることも重要だからです。

 

このように子どもたちにとって本当の家族ともいえる養育者の皆さんは、

社会にとってかけがいのない存在となり得ます。

 

このように、里親やファミリーホームが

子どもたちを社会全体につなげていく大きな取り組みの「鍵」を担っており、

 

そこにいる養育者は、

社会全体を代表しながらその代理として責任を果たしていると聞くと、

その役割の大きさに驚かれるかもしれません。

 

ある人たちがイメージするように、

「自分に子どもがいないので子どもを養子として引き取って育てる」という、

個人的に行うものとは、また違った種類の重要な役割を果たしていることを

理解して頂けるのではないかと思います。

 

 

まとめ

 

今回の記事を通して、

地域の皆さんにも社会的養護の必要性や重要性について考えていただけたら、

私たちにとってこれほど嬉しいことはありません。

 

社会全体で子どもたちに当たり前の生活を保障するには、

この記事を読んでくださっているあなたの力が必要です。

 

決して「自分の力なんか…」とか、

「私の力なんてあってもなくても同じ…」とは考えずに

まずは、知ることから始めていただけると嬉しいです。

 

 

この記事の前編はこちら↓↓

里親とは何か。~里親及びファミリーホーム養育指針「第1部 総論」①~

 

 

 

 

 

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今回の記事は「里親及びファミリーホーム養育指針」の第Ⅰ部である

総論に何が書いてあるかを要約してお伝えしてきました。

 

次回は第Ⅱ部の各論についてお伝えできればと思っています。

ぜひ次回の記事もご覧いただければと思います!

 

 

以下、里親及びファミリーホーム養育指針「第1部 総論」の原文を掲載します。

より詳しく、正確に知りたい方は、ぜひお読みください。

 

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リンク先↓↓

里親及びファミリーホーム養育指針 (mhlw.go.jp)

 

 

【里親及びファミリーホーム養育指針】

 

第Ⅰ部 総論
1.目的
・この「養育指針」は、里親及びファミリーホームにおける養育の内容と運営に関する指針を定めるものである。社会的養護を担う里親及びファミリーホームにおける養育の理念や方法、手順などを社会に開示し、質の確保と向上に資するとともに、また、説明責任を果たすことにもつながるものである。
・この指針は、そこで暮らし、そこから巣立っていく子どもたちにとって、よりよく生きること(well-being)を保障するものでなければならない。また社会的養護には、社会や国民の理解と支援が不可欠であるため、里親及びファミリーホームを社会に開かれたものとし、地域や社会との連携を深めていく努力が必要である。
・家庭や地域における養育機能の低下が指摘されている今日、社会的養護のあり方には、養育のモデルを示せるような水準が求められている。子どもは子どもとして人格が尊重され、子ども期をより良く生きることが大切であり、また、子どもにおける精神的・情緒的な安定と豊かな生活体験は、発達の基礎となると同時に、その後の成人期の人生に向けた準備でもある。
・この指針は、こうした考え方に立って、社会的養護の様々な担い手との連携の下で、社会的養護を必要とする子どもたちへの適切な支援を実現していくことを目的とする。

 

 

2.社会的養護の基本理念と原理
(1)社会的養護の基本理念
①子どもの最善の利益のために
・児童福祉法第1条で「すべて児童は、ひとしくその生活を保障され、愛護されなければならない。」と規定され、児童憲章では「児童は、人として尊ばれる。児童は、社会の一員として重んぜられる。児童は、良い環境の中で育てられる。」とうたわれている。
・児童の権利に関する条約第3条では、「児童に関するすべての措置をとるに当たっては、児童の最善の利益が主として考慮されるものとする。」と規定されている。
・社会的養護は、子どもの権利擁護を図るための仕組みであり、「子どもの最善の利益のために」をその基本理念とする。
②すべての子どもを社会全体で育む
・社会的養護は、保護者の適切な養育を受けられない子どもを、公的責任で社会的に保護・養育するとともに、養育に困難を抱える家庭への支援を行うものである。
・子どもの健やかな育成は、児童福祉法第1条及び第2条に定められているとおり、すべての国民の努めであるとともに、国及び地方公共団体の責任であり、一人一人の国民と社会の理解と支援により行うものである。
・児童の権利に関する条約第20条では、「家庭環境を奪われた児童又は児童自身の最善の利益にかんがみその家庭環境にとどまることが認められない児童は、国が与える特別の保護及び援助を受ける権利を有する。」と規定されており、児童は権利の主体として、社会的養護を受ける権利を有する。
・社会的養護は、「すべての子どもを社会全体で育む」をその基本理念とする。

 

 

(2)社会的養護の原理
社会的養護は、これを必要とする子どもと家庭を支援して、子どもを健やかに育成するため、上記の基本理念の下、次のような考え方で支援を行う。
①家庭的養護と個別化
・すべての子どもは、適切な養育環境で、安心して自分をゆだねられる養育者によって、一人一人の個別的な状況が十分に考慮されながら、養育されるべきである。
・一人一人の子どもが愛され大切にされていると感じることができ、子どもの育ちが守られ、将来に希望が持てる生活の保障が必要である。
・社会的養護を必要とする子どもたちに「あたりまえの生活」を保障していくことが重要であり、社会的養護を地域から切り離して行ったり、子どもの生活の場を大規模な施設養護としてしまうのではなく、できるだけ家庭あるいは家庭的な環境で養育する「家庭的養護」と、個々の子どもの育みを丁寧にきめ細かく進めていく「個別化」が必要である。
②発達の保障と自立支援
・子ども期のすべては、その年齢に応じた発達の課題を持ち、その後の成人期の人生に向けた準備の期間でもある。社会的養護は、未来の人生を作り出す基礎となるよう、子ども期の健全な心身の発達の保障を目指して行われる。
・特に、人生の基礎となる乳幼児期では、愛着関係や基本的な信頼関係の形成が重要である。子どもは、愛着関係や基本的な信頼関係を基盤にして、自分や他者の存在を受け入れていくことができるようになる。自立に向けた生きる力の獲得も、健やかな身体的、精神的及び社会的発達も、こうした基盤があって可能となる。
・子どもの自立や自己実現を目指して、子どもの主体的な活動を大切にするとともに、様々な生活体験などを通して、自立した社会生活に必要な基礎的な力を形成していくことが必要である。
③回復をめざした支援
・社会的養護を必要とする子どもには、その子どもに応じた成長や発達を支える支援だけでなく、被虐待体験や分離体験などによる悪影響からの癒しや回復をめざした専門的ケアや心理的ケアなどの治療的な支援も必要となる。
・また、近年増加している被虐待児童や不適切な養育環境で過ごしてきた子どもたちは、被虐待体験だけでなく、家族や親族、友達、近所の住人、保育士や教師など地域で慣れ親しんだ人々との分離なども経験しており、心の傷や深刻な生きづらさを抱えている。さらに、情緒や行動、自己認知・対人認知などでも深刻なダメージを受けていることも少なくない。
・こうした子どもたちが、安心感を持てる場所で、大切にされる体験を積み重ね、信頼関係や自己肯定感(自尊心)を取り戻していけるようにしていくことが必要である。
④家族との連携・協働
・保護者の不在、養育困難、さらには不適切な養育や虐待など、「安心して自分をゆだねられる保護者」がいない子どもたちがいる。また子どもを適切に養育することができず、悩みを抱えている親がいる。さらに配偶者等による暴力(DV)などによって「適切な養育環境」を保てず、困難な状況におかれている親子がいる。
・社会的養護は、こうした子どもや親の問題状況の解決や緩和をめざして、それに的確に対応するため、親と共に、親を支えながら、あるいは親に代わって、子どもの発達や養育を保障していく包括的な取り組みである。
⑤継続的支援と連携アプローチ
・社会的養護は、その始まりからアフターケアまでの継続した支援と、できる限り特定の養育者による一貫性のある養育が望まれる。
・児童相談所等の行政機関、各種の施設、里親等の様々な社会的養護の担い手が、それぞれの専門性を発揮しながら、巧みに連携し合って、一人一人の子どもの社会的自立や親子の支援を目指していく社会的養護の連携アプローチが求められる。
・社会的養護の担い手は、同時に複数で連携して支援に取り組んだり、支援を引き継いだり、あるいは元の支援主体が後々までかかわりを持つなど、それぞれの機能を有効に補い合い、重層的な連携を強化することによって、支援の一貫性・継続性・連続性というトータルなプロセスを確保していくことが求められる。
・社会的養護における養育は、「人とのかかわりをもとにした営み」である。子どもが歩んできた過去と現在、そして将来をより良くつなぐために、一人一人の子どもに用意される社会的養護の過程は、「つながりのある道すじ」として子ども自身にも理解されるようなものであることが必要である。
⑥ライフサイクルを見通した支援
・社会的養護の下で育った子どもたちが社会に出てからの暮らしを見通した支援を行うとともに、入所や委託を終えた後も長くかかわりを持ち続け、帰属意識を持つことができる存在になっていくことが重要である。
・社会的養護には、育てられる側であった子どもが親となり、今度は子どもを育てる側になっていくという世代を繋いで繰り返されていく子育てのサイクルへの支援が求められる。
・虐待や貧困の世代間連鎖を断ち切っていけるような支援が求められている。

 

 

(3)社会的養護の基盤づくり
・社会的養護は、かつては親のない、親に育てられない子どもを中心とした施策であったが、現在では、虐待を受けた子ども、何らかの障害のある子ども、DV被害の母子などが増え、その役割・機能の変化に、ハード・ソフトの変革が遅れている。
・社会的養護は、大規模な施設養護を中心とした形態から、一人一人の子どもをきめ細かく育み、親子を総合的に支援していけるような社会的な資源として、ハード・ソフトともに変革していかなければならない。
・また、家庭的養護の推進は、養育の形態の変革とともに、養育の内容も刷新していくことが必要である。
・社会的養護は、家庭的養護を推進していくため、原則として、地域の中で養育者の家庭に子どもを迎え入れて養育を行う里親やファミリーホームを優先するとともに、児童養護施設、乳児院等の施設養護も、できる限り小規模で家庭的な養育環境(小規模グループケア、グループホーム)の形態に変えていくことが必要である。
・施設は、社会的養護の地域の拠点として、施設から家庭に戻った子どもへの継続的なフォロー、里親支援、社会的養護の下で育った人への自立支援やアフターケア、地域の子育て家庭への支援など、専門的な地域支援の機能を強化し、総合的なソーシャルワーク機能を充実していくことが求められる。
・ソーシャルワークとケアワークを適切に組み合わせ、家庭を総合的に支援する仕組みづくりが必要である。
・社会的養護の役割はますます大きくなっており、これを担う人材の育成・確保が重要な課題となっている。社会的養護を担う機関や組織においては、その取り組みの強化と運営能力の向上が求められている。

 

3.里親・ファミリーホームの役割と理念
(1)里親・ファミリーホームの役割
・里親は、児童福祉法第6条の4の規定に基づき、要保護児童を養育することを希望する者であって、都道府県知事が児童を委託する者として適当と認めるものをいう。
・ファミリーホームは、児童福祉法第6条の3第8項の規定に基づき、要保護児童の養育に関し相当の経験を有する者の住居において養育を行うものをいう。
・里親及びファミリーホームが行う養育は、委託児童の自主性を尊重し、基本的な生活習慣を確立するとともに豊かな人間性及び社会性を養い、かつ、将来自立した生活を営むために必要な知識及び経験を得ることができるように行わなければならない。
(2)里親・ファミリーホームの理念
・里親及びファミリーホームは、社会的養護を必要とする子どもを、養育者の家庭に迎え入れて養育する「家庭養護」である。
・また、社会的養護の担い手として、社会的な責任に基づいて提供される養育の場である。
・社会的養護の養育は、家庭内の養育者が単独で担えるものではなく、家庭外の協力者なくして成立し得ない。養育責任を社会的に共有して成り立つものである。また、家庭内における養育上の課題や問題を解決し或いは予防するためにも、養育者は協力者を活用し、養育のありかたをできるだけ「ひらく」必要がある。
・里親制度は、養育里親、専門里親、養子縁組里親、親族里親の4つの類型の特色を生かしながら養育を行う。また、ファミリーホームは、家庭養護の基本に立って、複数の委託児童の相互の交流を活かしながら養育を行う。

 

 

4.対象児童
・里親及びファミリーホームに委託される子どもは、新生児から年齢の高い子どもまで、すべての子どもが対象となる。
・保護者のない子どもや、親から虐待を受けた子ども、親の事情により養育を受けられない子どもなど、子ども一人一人の課題や状況に則し、最も適合した里親等へ委託される。
・また、保護者による養育が望めず養子縁組を検討する子どもや、実親との関係も保ちながら長期間の養育を必要とする子ども、あるいは、保護者の傷病などで短期間の養育を必要とする子どもなど、社会的養護を必要とする期間も多様である。
・障害のある子どもや非行の問題がある子どもなど個別的な支援を必要とする子どもは、適切に対応できる里親等に委託される。

・里親及びファミリーホームは、18歳に至るまでの子どもを対象としており、必要がある場合は20歳に達するまでの措置延長をとることができる。
・里親等は、委託された子どもの背景を十分に把握し、その子どもを理解して、必要な心のケアを含めて、養育を行わなければならない。

 

 

5.家庭養護のあり方の基本
(1)基本的な考え方(家庭の要件)
・家庭は子どもの基本的な生活を保障する場である。家庭のあり方やその構成員である家族のあり方は多様化してきているが、子どもの養育について考慮した場合、家庭には養育を担う上での一定の要件も存在する。
・社会的養護における「家庭養護」は、次の5つの要件を満たしていなければならない。
①一貫かつ継続した特定の養育者の確保
・同一の特定の養育者が継続的に存在すること。
・子どもは安心かつ安全な環境で永続的に一貫した特定の養育者と生活することで、自尊心を培い、生きていく意欲を蓄え、人間としての土台を形成できる。
②特定の養育者との生活基盤の共有
・特定の養育者が子どもと生活する場に生活基盤をもち、生活の本拠を置いて、子どもと起居をともにすること。
・特定の養育者が共に生活を継続するという安心感が、養育者への信頼感につながる。そうした信頼感に基づいた関係性が人間関係形成における土台となる。
③同居する人たちとの生活の共有
・生活の様々な局面や様々な時をともに過ごすこと、すなわち暮らしをつくっていく過程をともに体験すること。
・これにより、生活の共有意識や、養育者と子ども間、あるいは子ども同士の情緒的な関係が育まれていく。そうした意識や情緒的関係性に裏付けられた暮らしの中での様々な思い出が、子どもにとって生きていく上での大きな力となる。
・また、家庭での生活体験を通じて、子どもが生活上必要な知恵や技術を学ぶことができる。
④生活の柔軟性
・コミュニケーションに基づき、状況に応じて生活を柔軟に営むこと。
・一定一律の役割、当番、日課、規則、行事、献立表は、家庭になじまない。
・家庭にもルールはあるが、それは一定一律のものではなく、暮らしの中で行われる柔軟なものである。
・柔軟で相互コミュニケーションに富む生活は、子どもに安心感をもたらすとともに、生活のあり方を学ぶことができ、将来の家族モデルや生活モデルを持つことができる。
・日課、規則や献立表が機械的に運用されると、子どもたちは自ら考えて行動するという姿勢や、大切にされているという思いを育むことができない。
・生活は創意工夫に基づき営まれる。そうした創意工夫を養育者とともに体験することは、子どもの自立に大きく寄与し、子どもにとって貴重な体験となる。
⑤地域社会に存在
・地域社会の中でごく普通の居住場所で生活すること。
・地域の普通の家庭で暮らすことで、子どもたちは養育者自身の地域との関係や社会生活に触れ、生活のあり方を地域との関係の中で学ぶことができる。
・また、地域に点在する家庭で暮らすことは、親と離れて暮らすことに対する否定的な感情や自分の境遇は特別であるという感覚を軽減し、子どもを精神的に安定させる。

 

 

(2)家庭養護における養育
①社会的養護の担い手として
・里親及びファミリーホームにおける家庭養護とは、私的な場で行われる社会的かつ公的な養育である。
・養育者の家庭で行われる養育は、気遣いや思いやりに基づいた営みであるが、その担い手である養育者は、社会的に養育を委託された養育責任の遂行者である。
・養育者は、子どもに安心で安全な環境を与え、その人格を尊重し、意見の表明や主体的な自己決定を支援し、子どもの権利を擁護する。
・養育者は子どもにとって自らが強い立場にあることを自覚し、相互のコミュニケーションに心がけることが重要である。

・養育者は独自の子育て観を優先せず、自らの養育のあり方を振り返るために、他者からの助言に耳を傾ける謙虚さが必要である。
・家庭養護の養育は、知識と技術に裏付けられた養育力の営みである。養育者は、研修・研鑽の機会を得ながら、自らの養育力を高める必要がある。
・養育者が、養育がこれでよいのか悩むことや思案することは、養育者としてよりよい養育を目指すからこそであり、恥ずべきことではない。養育に関してSOSを出せることは、養育者としての力量の一部である。
・養育が困難な状況になった場合、一人で抱え込むのではなく、社会的養護の担い手として速やかに他者の協力を求めることが大切である。
・児童相談所、里親支援機関、市町村の子育て支援サービス等を活用し、近隣地域で、あるいは里親会や養育者同士のネットワークの中で子育ての悩みを相談し、社会的つながりを持ち、孤立しないことが重要である。
・家庭養護では、養育者が自信、希望や意欲を持って養育を行う必要がある。そのために自らの養育を「ひらき」、社会と「つながる」必要がある。
②家庭の弱さと強さの自覚
・子どもを迎え入れるどの家庭にも、その家庭の歴史があり、生活文化がある。養育者の個性、養育方針、養育方法等にはそれぞれ特色がある。また、地域特性もある。そして、これらには「弱さ」も「強さ」もある。
・新たに子どもが委託されたり、委託人数が減るなど構成員に変化が加わることで、不安定さが現れたり、安定性が増す変化があったり、養育者に柔軟な工夫が求められることもある。また、養育者が子どもの養育に心身の疲れを覚えたり、家族構成員の変化から養育力に影響が出る場合もある。
・それぞれの養育の場に含まれる「弱さ」の部分も自覚し、支援やサポートを受け、研修等を通して養育力を高めるとともに、ごく当たりまえの日常生活の中に含まれる、養育の「強さ(Strength)」をより発揮できるよう意識的に取り組む姿勢が求められる。養育者と子どもの日々の生活が養育者の成長にもなり得る。
③安心感・安全感のある家庭での自尊心の育み
・子どもにとって自尊心は、生きていく上で必要不可欠な自信、意欲や希望をもたらし、他者に対する寛容性や共感性、困難に立ち向かう力、粘り強さ、忍耐力の形成に結び付く。
・子どもが自分の存在について、「大切にされている」「生まれてきてよかった」と感じられるように、養育者の家庭は、子どもに安心感・安全感とともに、心地よさを提供することが重要である。
・生活が落ち着いてくると、子どもは、養育者との関係や許容範囲などを確かめる行動や退行を示すことがある。そのような時に、養育者は無力感を感じ、子どもに否定的感情を抱き、子どもとの関係が悪循環に陥ることもある。
・どうにか改善したいという思いが、子どもへの叱咤激励や、問題点の指摘に傾斜し、子どもにとって、あるがままの自分の存在が受け入れられないことに対する思いが、自尊心とは対極にある自己否定感を生み出すこともある。
・生活の中では、すぐに実感できる改善はみられなくても、変化を無理に求めず、子どもの実像を受けとめる。安心と安全のある家庭で、子どもと時間を共有し、思い出を積み重ねることで、子どもは変化していく。
④自立して生活できる力を育む
・自立とは、誰にも頼らないで生きていくことではなく、適宜他者の力を借りながら他者と関係を結びながら自分なりに生きていくことである。そのことを子どもが認識できるよう、まずは日常生活の中での安心感・安全感に裏付けられた信頼感を育むことが重要である。
・子どもには、あるがままの自分を受け入れてもらえるという依存の体験が必要である。日々自然にくり広げられ、くり返される家庭の中での日常生活のなかで、子どもの可能性を信じつつ寄り添うおとなの存在と歩みが、子どもにとって将来のモデルになる。
・子どもが生活を通して体験したこと、学習したことは、意識的、無意識的な記憶となり、生活の実体験が子どもに根づき、再現していくこととなる。
・困難な出来事があった際にどのように乗り超えていくかなどは、すべて子どもにとって重要な暮らしの体験であり、困ったとき、トラブルがあったときにはとくに他者に協力を求めるという姿勢が持てるよう、ともに生活する中でそうした体験を子どもに提供する。
⑤帰ることができる家
・措置解除後においても、養育者と過ごした時間の長短にかかわりなく、子どもが成人した時、結婚する時、辛い時、困った時、どんな時でも立ち寄れる実家のような場になり、里親家庭やファミリーホームがつながりを持ち続けられることが望ましい。
・養育の継続が難しくなり、委託の解除となった場合でも、成長過程の一時期に特定の養育者との関係と家庭生活の体験を得たことは、子どもにとって意味を持つ原体験となるので、いつでも訪ねて来られるよう門戸を開けて待つことも大切である。
⑥ファミリーホームにおける家庭養護
・ファミリーホームは、養育者の住居に子どもを迎え入れる家庭養護の養育形態である。里親家庭が大きくなったものであり、施設が小さくなったものではない。
・ファミリーホームの養育者は、子どもにとって職員としての存在ではなく、共に生活する存在であることが重要である。したがって養育者は生活基盤をファミリーホームにもち、子どもたちと起居を共にすることが必要である。
・ファミリーホームの基本型は夫婦型であり、生活基盤をそこに持たない住み込み職員型ではない。児童養護施設やその勤務経験者がファミリーホームを設置する場合には、家庭養護の特質を十分理解する必要がある。
・養育者と養育補助者は、養育方針や支援の内容を相互に意見交換し、共通の理解を持ち、より良い養育を作り出す社会的責任を有している。
・養育補助者は、家事や養育を支援するとともに、ファミリーホーム内での養育が密室化しないよう、第三者的な視点で点検する役割も担うことを理解する。
・補助者が養育者の家族である場合には、養育がひらかれたものとなるよう、特に意識化することが必要である。
・ファミリーホームは、複数の子どもを迎え入れ、子ども同士が養育者と一緒に創る家庭でもある。子ども同士の安定を図るため、子どもを受託する場合は、子どもの構成や関係性を考慮し、児童相談所との連携が大切になる。また、養育者が子ども同士の関係を活かし、子ども同士が成長しあうために、どのようなかかわりが必要かという観点を持ちながら養育にあたることが必要となる。

 

 

(3)地域とのつながりと連携
①地域や社会へのひろがり
・子どもの育ちには、家庭が必要であると同時に、地域の人々や機関・施設の関与や支援が必要である。
・私的な生活の営みを軸とする家庭に子どもを迎え入れる場合であっても、公的な養育となる里親、ファミリーホームにおける養育には、地域社会と関係を結び、必要に応じて助け、助けられる関係を作る社会性が必要である。
・関係機関との協働はもとより、子どもの通園・通学先の職員、近隣住民が、委託されている子どもの状況を理解し養育を応援してくれる関係づくりを試みていくことが養育者に求められる。
・また、日頃から里親等も地域住民の一人として、近隣との良好な関係を築いておくことや、社会的養護の理解を深めてもらう働きかけをすることが重要である。
・なぜならば、子どもにとって養育者は地域に生き、社会に生きる大人のモデルであり、また、子どもの生活は、人々の社会的養護への理解度によって大きく影響されるからである。
・養育者の中には、社会的な状況や養育者の思いから地域の中に「里親家庭」として溶け込むことを求めず、ひっそりと生活したい里親もいるが、里親であることをオープンにしながら、近隣住民、関係者、関係機関、地域、社会に働きかけ、地域とのかかわりの中で養育を展開していく里親もいる。
・里親等における養育は、あくまで社会的養護であるため、地域や社会に対してクローズなものになってはならない。諸事情により近隣等との関係形成が困難な場合にも、地域の里親会や里親支援を行う民間団体、あるいはその他の子育て支援のネットワークなどのつながりの中に身をおき、孤立しないよう、独善的な養育に陥らないよう養育をひらくことが求められる。
・養子縁組里親の場合や親族による里親の場合は、地域との関係の持ち方が養育里親の場合とは異なる。しかし、それぞれの事情は踏まえた上でもなお、孤立した養育、独善的な養育とならないようにすることは同様である。また、親族による里親の場合、親族であるがゆえに、里親も子どももお互いに無理を強いられる場合がある。養育上の悩みや困難を共有できる場や人材を確保し、社会資源を活用しながら養育にあたることが望ましい。
②里親会等への参加
・日々の暮らしの中で起こる養育者としての悩み等は、時に社会的養護に携わる養育者の立場でしか共有できない、あるいは理解されにくいこともある。同じ立場で話すことができる里親会や当事者のネットワークを活用することは大切である。
・一方、他の養育者の体験談やアドバイスが、自己の養育に有効でない場合もある。このことに留意しながら、養育者同士による活動を活かすことが必要である。
・里親サロンなどでは、子どもの状況が具体的に語られることが少なくない。活動の前提として、語られた内容を活動の終了後どう扱うかを確認しておくことも必要である。
・里親会は、社会的養護の仕組みの中で重要な役割を持つことから、すべての里親は、里親会の活動に参加する必要がある。また、すべてのファミリーホームは里親会やファミリーホームの協議会に参加する必要がある。
③市町村の子育て支援事業の活用
・家庭養護は、保護者として地域で生活していることを理解し、市町村の子育て支援が必要であることを養育者自身や関係機関が受け止め、積極的に活用する。
・生活が根ざしている身近な市町村の地域子育て支援につながることや利用できるサービスを活用していくことも、養育のサポートとしては有効である。また、地域子育て支援の活動等において力量を発揮し、支援する側として活躍する里親もいる。
・福祉事務所や関係機関と連携し、保育所や放課後児童クラブの活用やショートステイなど、レスパイト・ケアと併せて養育者は周囲の支援や協力を受けることは養育者の安定につながることを理解する。
・児童相談所から地域子育て支援機関に、里親等の情報が自動的に提供されることはないため、地域子育て支援機関に必要なかかわりは求めていくことが必要である。ただし、委託されている子どもの養育上の困難等は、地域子育て支援機関よりも、里親支援機関や支援担当者、児童相談所等に伝える方が適切な内容もあることを意識化しておく。

 

 

6.里親等の支援
①支援の必要性
・里親とファミリーホームは、地域に点在する独立した養育である。このため、閉鎖的で孤立的な養育となるリスクがある。
・里親とファミリーホームが社会的養護としての責任を果たすためには、外からの支援を受けることが大前提である。家庭の中に「風通しの良い部分」を作っておく必要がある。
②関係機関・支援者との養育チーム作り
・里親・ファミリーホームにおける養育は、家庭の中で行うが、決して自己完結型では行うことができないので、関係機関との連携・協働が不可欠である。関係機関・支援者とともに養育のチームを作っていく意識が必要である。
・一人一人抱えている状況や課題の異なる子どもの委託の目的・支援目標を理解し、その子どもの社会的養護の担い手、日々の養育者として、関係機関から支援を受け、随時状況を報告・相談しながら社会的養護を進めていくことが求められる。
・養育が難しいと感じる子どもについての専門的な助言や診断、治療的ケアの必要性の検討等、関係機関の見解がとくに必要な場合も、助言や連携を求めていくことが必要である。
・養育の「応援団」を確保していくことで社会的養護は成り立つことを常に意識したい。
・児童相談所や支援機関等は、定期的な家庭訪問を行うなど、日頃から里親と顔なじみになり、子どもと里親のことを理解する必要がある。里親もこれを受け入れることが必要である。

 

 

 

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里親とは何か。~里親及びファミリーホーム養育指針「第1部 総論」①~

 

 

 

 

 

記事:Zidonet 徳久

 

 

 

 

 

 

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