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里親とは何か。~里親及びファミリーホーム養育指針「第2部 各論」②~

Zidonetです。

 

【前半の記事はこちら↓↓】

里親とは何か。~里親及びファミリーホーム養育指針「第2部 各論」①~

 

 

 

早速、里親とは何か。

~里親及びファミリーホーム養育指針「第2部 各論」

の続きをお話したいと思います。

 

 

社会と協力しながら子どもを育てていく。

里親は子どもと社会をつなぐ「窓口」です。

 

ですから自分の家のこととはいえ、

生活のすべてを里親の思い通りに決めていくことができるわけではありません。

 

例えば「子どもの呼び方」という興味深い問題があります。

里子が元々持っている「姓」や「名前」は子どもにとって一つのアイデンティティ、

つまり「自分の存在の拠り所」ともいえる大切なものです。

 

ですから

 

”学校では里親と同じ姓を使った方が、子どもにとって問題が少ないだろう…”

というような安易な考えだけで決めることはできないのです。

 

これは、子どもが里親をどのように呼ぶか

(お父さん・お母さん・おじさん・おばさん、etc…)

という問題にもつながります。

 

ですから小さなことに思えたとしても、

子どもに影響のあることを決める場合には、

児童相談所や学校などの教育機関、医療機関やその他関係者と

一緒に子どもにとって最善の方法は何かを考えていく必要があるのです。

 

 

 

 

子どもの生い立ちについての問題。

子どもが自分の生い立ちについて知ることも非常に重要な問題です。

また、子どもが実親についてどのように考えるかというのも

適切な援助を必要とする大きなテーマです。

 

これは想像に難しくないことですが、

このようなデリケートな問題について扱う際に、

里親には注意深い態度・行動・話し方が求められます。

 

もちろん、子どもは自分の生い立ちについて真実を知る権利と必要を持っていますが、

そのような話をする際には「何を言うか」ということだけでなく、

「いつ・どのように言うか」の方に心を配ることが重要になってくるのです。

 

特に学校などでは授業中に「自分の生い立ちに関係した課題」が出ることもあり、

そのような場合に子どもがショックを受けてしまわなようにするには、

学校関係者との事前の相談も不可欠になってくるでしょう。

 

また、里親は里子に対する強い思いゆえに、

時に実親に対して否定的な見方を持ったり、

場合によっては言葉にしてしまったりする場合がありますが、

これは里子にとっても実親にとってもマイナスの影響となってしまいます。

 

里親は里子だけではなく、実親の立場にも立って理解を示し、

子どもを育てるチームの一員とみなして協力することが必要になってきます。

 

(もちろんそれが不可能と考えられる場合もありますので、

児童相談所と連携しながら対応していくことになります。)

 

このように子どもが

「自分の生い立ちも含めて、今ある自分に価値を見出す」という

人間にとって重要な「尊厳」をもつことができるように養育するには、

里親に非常に多くのことが求められることになります。

 

しかし心配しすぎる必要はありません。

繰り返しになりますが、里親は子どもたちを育てていくチームの一員です。

困った時だけでなく、嬉しい時も悲しい時もいつもそばにはチームメンバーがいてくれるのです。

 

このようにして里親も里子も地域社会、

つまり大きな輪の一員になっていくことができるというのは、

 

普通の家庭ではなかなか味わうことのできない素晴らしい体験である、

ということができるに違いありません。

 

委託が終わった後の子どもとの関係。

里親は委託が終了するまで、

もしくは委託された子どもが18歳(必要が認められれば20歳)になるまで

養育を続けることができますが、

 

その後、自立能力が確認されると委託措置が解除になります。

つまり里親制度における里親と里子という関係は終了します。

 

しかし、人と人とのつながりは決してなくなることはありません。

里子は実家に帰るように里親をいつでも訪問でき、

人生の先輩に色々なことを相談したり、支えて貰ったりすることができるのです。

 

また、ケースによっては里親と里子が養子縁組を結ぶという場合も考えられます。

 

このような場合には関係はどうなるのでしょうか?

もちろん里親制度の里親と里子の関係は終了します。

 

しかし、法律的に親子関係となりますので、

家族としての関係は子どもが成人した後もずっと続くことになります。

 

 

体罰について。

2020年4月1日に改正された「児童虐待防止法」と「児童福祉法」によると、

体罰とは子どもに苦痛を与えるものであり、虐待に含まれると明確にされています。

 

また、体罰ではないものの怒鳴りつけたり、

子どもの心を傷つけたりする暴言も子どもの健やかな成長・発達に

悪影響を与える可能性があると指摘されています。

 

ですから里親はいかなる場合においても

このような子どもの人格を辱めるような言動を行ってはなりません。

 

体罰を伴わない子育ての技術を習得する必要があるのです。

 

しかし、里親も人間です。

 

極度のストレスによって自分では知らないうちに子どもを傷つけてしまっていた…

という場合も起こりえます。

 

ですから、里親の側には必要な場合にSOSを発信する方法、

そして里親をサポートしている関係者にはSOSをキャッチできる体制を

あらかじめ準備しておくことが重要になってきます。

 

このような意味でも里親の家庭が孤立しておらず、

常に社会とつながっていることは大切だということを理解することができます。

 

大人でも全部を完璧にできる人などいません。

できないことも、失敗してしまうこともあります。

 

でもそんなときは失敗から学び、改善し、

他の人に助けて貰うことをためらわないなら必ず問題を乗り越えることができます。

 

このように人と人との助け合いによって全員が人間として成長し、

幸せになることを目指していくこと自体が「社会的養護」なのです。

 

 

 

 

まとめ

 

Zidonetは、社会的養護を必要とする子どもたちへの直接的な養育・支援も行っていますが、

指針に記載されていることをしっかりと出来ているとは到底言えません。

 

子どもたちから日々学ぶことばかり。「もっとこうすれば良かった」の繰り返し。

 

指針とは例えるなら、

「子どもの最善の利益」という山の頂上向かうための道しるべ。

 

 

聖人君子ではない私たちは、

子どもたちに教わりながら、一緒に試行錯誤・創意工夫しながら、

 

一歩一歩、山を登っていきたと思います。

 

 

前回・今回の記事はいかがだったでしょうか?

この記事を読んでくださってあなたにぜひお願いしたいことがあります。

 

ぜひ里親・ファミリーホーム制度について、まずは興味を持ち、ご自身が知り、

可能であれば、周囲の皆さんに情報を発信していただけないでしょうか?

 

一人一人の力は小さくても、

みんなで協力すれば大きな成果を出すことができるに違いありません。

 

日本の全ての人が社会的養護についての知識を持ち、

全員がチームとしてすべての子どもたちを育てていく、

そんな社会実現することを私たちは願ってやみません。

 

 

前半の記事はこちら↓↓

里親とは何か。~里親及びファミリーホーム養育指針「第2部 各論」①~

 

 

記事:Zidonet 徳久

 

 

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第Ⅱ部 各論
1.養育・支援

 

(1)養育の開始
・里親及びファミリーホームにおける家庭養護は、子どもを養育者家族の生活の場
 である家庭に迎え入れて行う公的な養育であり、「中途からの養育」であることがその特徴である。

・養育者が子どもを迎え入れるとき、ともに生活する仲間として一緒に生活できることの喜びを

 子どもに伝えることから養育が始まる。

・子どもたちのそれまでの生活や人生を尊重し、不安や戸惑いがあることを前提として迎える。

 家庭に新しいメンバーが加わることによる変化は決して小さいものではなく、子どもたちが、

 養育者家庭の一員として落ちつくまでに要する時間も、子どもの個性や年齢、背景によって異なることを理解する。

・また、迎える家庭の構成員が、子どもを迎えることを望み、納得していることが重要である。

・既に受託している子どもや実子を含む、生活を共にしている子どもへの事前の説明や働きかけを行うとともに、

 心の揺れ動きなどに十分に配慮する。

 

(2)「中途からの養育」であることの理解
・実親子関係は根源的な人間関係である。その関係から引き離され、あらたな養育者と関係を形成することの重要性と、

 それに伴う子どもの困難さや行動上の課題等を理解した上で、子どもの育ち直しの過程を適切な対応により十分に保障する。

・子どもは被虐待的環境から安心・安全な環境に身を置くことで、養育者との関係や許容範囲などを確かめる行動や、

 いわゆる「赤ちゃん返り」と言われる退行を示すことがある。

・養育者がこうした行動を否定することなく受け入れることは、子どもの育ち直しの過程において必要不可欠である。

・養育者として対応に苦慮するときや対応方法が見つからない時等は、社会的養護の担い手として速やかに他者に協力を求めることが大切である。

・実子などを養育した過去の経験が、こうした子どもの養育過程において必ずしも有効に活用できないこともあり、

 むしろそうした体験が育ち直そうとしている子どもの養育を妨げる場合のあることを理解し、

 他者の助言や協力を求めることが必要である。

・子どもが抱えている否定的な自己認識を肯定的な認識に変化できるよう、子どもとともにそれまでの生育歴を反復して振り返り、

 整理することが必要である。

(3)家族の暮らし方、約束ごとについての説明
・「日課」や「規則」がなく、集団生活ではない、あるいは、その要素が緩やかなことが家庭養護の良さである。

 しかし、ルールが全く無い、あるいは必要はないということではなく、個々の家庭には、その家庭の暮らし方がある。

・迎える子どもに、最低限必要な家庭の決まりを説明して、その子どもの意見を聞いた上で、合意を得ることが必要である。

・子どもと合意を得ることは、迎える家庭が、その家庭らしさを保つためであり、また、家庭に迎える子どもの適応を助け、

 暮らしやすさを実現するためにも必要である。

・細かすぎるルールを養育者が子どもに強要するのではなく、子どもの年齢や状況に応じて、子ども自身の意見を参考にして、適宜見直すことが必要である。

 

(4)子どもの名前、里親の呼称等
・子どもの「姓」、子どもの「名前」は、その子ども固有のものであり、かけがえのないものである。

・子どもを迎え入れた里親の姓を通称として使用することがあるが、その場合には、委託に至った子どもの背景、

 委託期間の見通しとともに、子どもの利益、子ども自身の意思、実親の意向の尊重といった観点から個別に慎重に検討する。

・里親の考え方もあるが、里親だけで決められるものではなく、関係者間での方針の確認が必要である。

・里父や里母の呼称について、お父さん、お母さん、おじさん、おばさん、○○(里親姓)のお父さん、お母さんなど受託された子どもの状況で決める。

・里親として子どもを迎えたことを近隣にどう伝えるかは、養育里親である場合や養子縁組希望里親の場合とでは子どもの状況が異なるため、

 よく検討して進める必要がある。

・養子縁組を希望する場合などは、子どもの年齢に応じて里親姓である通称を使用し、近隣や地域、

 学校等の関係者への説明や理解を得るよう働きかけることも大切である。

 

(5)幼稚園や学校、医療機関等との関係
・学校等は、子どもが 1 日の多くの時間を過ごす大切な生活の場である。学校との良好な協力関係を築くことにより、

 保護者と教師という関係だけでなく、同じ支援者の立場でのより有効な子どもへの支援に結びつけることができる。

・子どもが通う幼稚園や学校には、社会的養護を必要とする子どもの養育であることを伝え、よき理解者となってもらえるよう、働きかけることが必要である。

・子どもも、新しい生活の場に移行したことで幼稚園・学校で落ち着かず、順調にいかないこともある。

 里親側が心を閉じると、養育上の様々なリスクを高めてしまい、子ども自身に負荷をかけることもある。

・医療機関によっては、里親が社会的養護である家庭養護について説明しなくてはならない負担感を感じることがある。

・しかし、あきらめず必要な説明をするとともに、里親が抱えた思いを信頼できる人に聞いてもらったり、

 里親経験者の工夫や里親支援担当者からアイデアを聞いたりし、周囲に理解を求めていく姿勢を保つことが求められる。

・児童相談所の職員等が、新規委託児童の通う幼稚園や学校に里親とともに出向き、園長、校長、担任らに里親養育の理解を求めるための事前説明をし、

 子どもの姓の扱いなど要点を含めて確認する機会をもつ取組がなされている。社会との関係形成のプロセスに、

 必要に応じて児童相談所等の関係機関に支援を求めること、説明する言葉を得るためにしおり等を活用することも有効である。

 

(6)子どもの自己形成
・子どもの人生は、生まれた時から始まっている。自己の生い立ちを知ることは自己形成において不可欠である。真実告知は行うという前提に立ち、

 子どもの発達や状況に応じて伝え、子どもがどう受け止めているかを確かめつつ、少しずつ内容を深めていくことが大切である。

・「真実告知」は、単に「血縁上の親が別にいること」「養育者と血のつながりがないこと」を告げるという意味ではなく、主たる養育者である里親等が、

 「この世に生を受けたことのすばらしさ」「あなたと共に暮らせるようになった喜び」や子どもの生い立ちなどについて、

 嘘の無い「真実」として子どもに伝えることである。その「真実」をどのように表現をするかを配慮しなければならない。

・思春期の場合や小学校で行われる「生い立ちについての授業」などには、他の里親の経験や児童相談所からのアドバイス等を参考にして、

 学校関係者とも必要な理解や配慮の共有に努めながら、具体的に対処する。そのためにも、教育関係者との連携を日常的に築いておくことが重要である。

・真実告知のタイミングは、里親等が児童相談所や支援機関と相談の上、行うことが望ましい。

・ライフストーリーワークなど子どもの生きてきた歴史や子どもに寄せられて来た思いを綴り、写真や数値、できるようになったこと、

 かかわってくれた人・物などとともに記録としてまとめることも、子どもが、自らを「他者と違う固有の存在」「尊厳をもった大切な自分」であると気づき、

 自分を大切にし、誇りをもって成長するために有効である。

 

(7)実親との関係
・子どもにとっての実親は、子どもが自身を確認する上での源である。子どもの前で子どもの親の否定をしない。

 また、子ども自身から実親のことが語られる場面では、どう語られるかに耳を傾けるとともに、話されたことに養育者がどう応答するかについて配慮する。

・一見身勝手に思える実親の行動や態度に対し、背景にある実親なりの事情や実親自身の思いが十分に理解できず、養育者として否定的な感情を持つこともある。
 そのことを実親も敏感に察し、積極的な子どもへのかかわりを躊躇することも考えられる。

 養育者として実親の状況の理解や共感に努める姿勢は、子どものためにも必要である。

・子どもが実親に怒りを持ったり、実親に会えないことを自己否定的にとらえたり、里親等への配慮から実親について尋ねたい気持ちに遠慮することもある。

 実親について語ることを家庭内でのタブーとしないことも重要である。

・子どもの実親についての受け止め方は、養育者との生活のなかで変化し、子どもの心や日常生活、生き方に大きな影響を与える。

 子どもの立場に立って実親への思いを理解することが、養育者に不可欠である。児童相談所とも情報を共有し、見通しを確認する。

・実親が複雑で深刻な事情を抱えている場合もあり、実親の子どもに対する思いも様々である。

 実親が子どもを養育できないことの背景にある個々の問題を踏まえ、実親の抱える課題や生活問題に、

 子どもと里親等が巻き込まれないようにしながら、子どもと実親との交流そのものは保証する。

・一定のルールのもとで、実親との面会、外出、一時帰宅などの交流を積極的に行う。

 実親とのかかわりが、子どもの生活や福祉、里親等とその家族の生活を脅かす場合に限り、交流が制限される。

・交流をどのように行うかについては、養育者と児童相談所が協議し、子ども自身の意見を踏まえて決定する。

 交流の実施状況を児童相談所が把握し、トラブルが生じた場合の対応を明確にしておくことも大切である。

・実親の状態が不明な場合、実親の状況が子どもに伝えられていない場合、望んでも実親との交流がかなわない場合、子どもが交流を希望しない場合や、

 虐待を受けた子どもの場合など、子どもの状況を踏まえて、適切な配慮を行う。

・実親との交流により、子どもが不安定になり、意欲の低下や体調等を崩す場合もある。

 交流後の子どもの様子を把握し、気持ちをくみ上げるコミュニケーションを心がけるなど、個々の子どもの状況に応じて対応する。

 

(8)衣食住などの安定した日常生活
・里親等が提供する養育だけが、子どもの心身を安定させ、成長させ、生きる力を増進させるのではなく、

 里親等と里親等家族の存在、家族間の関係、食事、生活習慣、余暇の過ごし方などあたりまえの生活や

 親族・友人・地域との関係など里親等家庭での暮らしそのものが子どもを育むことを理解する。

・子どもはこうした生活を通して将来の社会生活や成長して、家庭を作る場合に役立つ技術を身につけ、家庭生活のモデルを形成することができる。

 

(9)実子を含む家族一人一人の理解と協力
・家庭に子どもを迎え入れるため、家族の一部は生活に参加しないということができない。

 先に受託している子どもを含め、家族全員が新しく迎え入れる子どもとの生活に影響を受けることを受け止める必要がある。

・養育者や児童相談所は、新たな子どもを受け入れられる状況であるか否か、家庭や子どもの状況のアセスメントを前提としたマッチングを行い、

 双方が判断する。

・養育者や児童相談所は、家庭養護は実子の養育体験とは、必ずしも同じではないこと、一人の子どもが加わることによって変化する

 家庭内の力動の変化や個々人への影響があることを考慮する。

・養育者は受託している子どもとそれぞれ個別の時間やかかわりをもつように、実子と過ごしたり話したりする場面・時間も作ることが大切である。

・実子や既に受託している子どもに、適宜必要なことを説明する。生活を共有する立場である実子も、子どもとして意見表明できる雰囲気と関係を保つ。

 

(10)子どもの選択の尊重
・子どもが興味や趣味に合わせて、自発的な活動ができるよう工夫する。子ども一人一人の選択を尊重する。

 子どもが自分の好みや要望を表現できる雰囲気を生活の中につくる。

・子どもが自分の要望を表明するとともに、他者の要望も受け止めながら、対話ができていくように、

 ときには養育者が仲介しながらコミュニケーションの育ちを支える。

 

(11)健康管理と事故発生時の対応
・子どもの状態や発達段階に応じて、体の健康や衛生面に留意し、健康上特別な配慮を必要とする子どもについては、児童相談所や医療機関と連携する。

・事故や感染症の発生など緊急時には、子どもの安全を確保する。児童相談所と緊急の連絡方法などを確認しておく。

・災害時の避難方法や子どもの安全確保について、養育者らで確認する。食料や備品類など災害時の備蓄等を行う。

・災害などに対して備えていることを養育者の責任として子どもにも説明し、実際に見せて確認し、安心感をもって生活できるよう配慮する。

 

(12)教育の保障と社会性の獲得支援
・それまでの生育環境により、経験不足や基礎学力の不足など多くの課題を抱えている子どもにとって、学ぶ楽しさを取り戻し、

 さらには高校や大学などに進学する学力を獲得することは、子どもが自尊心を回復し、自立への歩みを踏み出す契機としても重要なことである。

・子どもの学力の状態に応じて、学習意欲を十分に引き出しながら、学習が安定に向かうよう工夫して支援する。

 必要に応じて、学習ボランティアや塾の活用を考える。

・年齢や発達状況など個々の状態に応じた社会性の獲得を目指し、体験の幅を広げるとともに、社会に出て行く子どもには、

 社会の一員であることが自覚できるよう支援を行う。

 

(13)行動上の問題についての理解と対応
・子どもが新しい環境や家族との関係に安心した時に表れる行動上の問題があることを理解する。

・子どもの行動にはメッセージが含まれていること、その子どもにとって何らかの意味があることを理解し、

 時には養育者同士で話すことで安心を得ることも大切である。心理的な支援を必要とする子どもについては、専門機関に相談する。

・性に関することをタブー視せず、子どもの年齢や発達状況に応じて、子どもの疑問や不安に答える。個別の状況に対応し、性の教育につながる支援を行う。

 

(14)進路選択の支援
・子ども自身の思いや要望によく耳を傾け、一緒に検討していく姿勢をもち、子どもの進路や就職支援など自己決定や自己選択ができるように

 判断材料を一緒に収集するなどして支援する。

・子どもにとって見通しがもてるよう、児童相談所や実親等と十分に話し合うことも大切である。

 

(15)委託の解除、解除後の交流
・円滑に委託解除できるよう、子どもの意向を尊重するとともに、児童相談所の里親担当者と子ども担当者を交え、十分に話し合う。

・進路決定後も可能な限り相談に応じ、つまずきや失敗など何らかの問題が生じた場合にも支援を心がける。

・進学や就職したあと、また成人したあとも、実家のようにいつでも訪問でき、また、相談に応じられるような交流を継続する。

 

(16)養子縁組
・養子制度の意義は、保護者のない子ども又は家庭での養育が望めない子どもに温かい家庭を与え、

 かつその子どもの養育に法的安定性を与えることにより、子どもの健全な育成を図るものである。

・普通養子縁組は、家庭裁判所の許可を受け、実親との法律上の関係は継続され、戸籍上は養子と記載される。

 特別養子縁組は、家庭裁判所の審判により、実親との親子関係は終了し、戸籍上は養親の長男・長女等と記載され、

 養子となる年齢に6歳未満という制限がある。

・養子制度は、永続的な養育が必要な子どもが、法的に親子関係を結び、より安定感を得ることができるようにする子どものための制度であり、

 跡継ぎを得るための制度ではないことを理解する必要がある。

・子どもを望みながら子どものない家庭や不妊治療を受けている家庭にとっては、里親制度や養子縁組制度が選択肢の一つとなるが、

 養育に困難さを覚えることもある。養親が子どもの最善の利益を実践することを理解するとともに、児童相談所や支援機関等で支えることが大切である。

・養子縁組成立後、児童相談所や里親会と離れてしまう養親も多い。しかし、親子の関係を築くなかで、様々な課題や問題が生じてくる。

 生い立ちなどの真実告知や実親への思いや葛藤、ルーツを探すことなどに、親子で対峙し、乗り越えることになる。

 先輩の養親や里親との交流や児童相談所への相談など、関係者や関係機関の支援を受けることが、よりよい親子の関係を結ぶことになる。

 

2.自立支援計画と記録
(1)自立支援計画
・児童相談所は、子どもが安定した生活を送ることができるよう自立支援計画を作成し、養育者はその自立支援計画に基づき養育を行う。

・自立支援計画には、子どもが委託される理由や育ってきた環境、養育を行う上での留意点や委託期間、実親との対応などが記載されているので、

 気になることは児童相談所に相談し、必要に応じて説明を受け、見通しを確認しながら、より子どもやその家族のことを理解する。

 

(2)記録と養育状況の報告
・受託した子どもの養育状況を適切な文言で記録を書くことや報告することを通して、子どもや子どもに関係する状況に対する理解を深め、

 また、養育者自身が養育を客観的に振り返ることができる。

・また、記録は子どもが家庭引き取りになる場合は、実親にとって子どもを理解する手段となり、養子縁組をする場合は、成長の記録の一部となる。

・子どもの課題や問題点などだけでなく、できていること、良いところ、成長したところなど、ポジティブな側面も記録することは、

 子どものより正確な理解を促すことにもなる。

・子どもが行動上の問題を起こす場合もあるため、問題が生じた背景や状況を記録し、児童相談所から適切な支援を受ける。

・子どもの変化や状況を児童相談所に伝え、児童相談所と一緒に定期的に自立支援計画を見直す。

 

3.権利擁護
(1)子どもの尊重と最善の利益の考慮
・子どもを権利の主体として尊重する。子どもが自分の気持ちや意見を素直に表明することを保障するなど、

 常に子どもの最善の利益に配慮した養育・支援を行う。

・子どもが主体的に選択し、自己決定し、問題の自主的な解決をしていく経験をはじめ、多くの生活体験を積む中で、

 健全な自己の成長や問題解決能力の形成を支援する。

・つまずきや失敗の体験を大切にし、自主的な解決等を通して、自己肯定感を形成し、たえず自己を向上発展させるための態度を身につけられるよう支援する。

・子どもに対しては、権利の主体であることや守られる権利について、権利ノートなどを活用し、子どもに応じて、

 正しく理解できるよう随時わかりやすく説明する。

 

(2)子どもを尊重する姿勢
・社会的養護を担う養育者として理解する必要のある倫理を確認し、意識化するとともに、養育者らは子どもの権利擁護に関する研修に参加し、

 権利擁護の姿勢を持つ。

・独立した養育の現場で子どもに密にかかわる者として、子どもが、生活の中で自分が大切にされている実感を持てるようにする。

 

(3)守秘義務
・子どもが委託に至る背景や家族の状況など、養育者として知り得た子どもや家族の情報のうち、子どもを守るために開示できない情報については、

 境界線を決めて確認し、守秘義務を守り、知り得た情報を外部には非公開で保持する。

・近隣に話をしにくかったり、里親として子どもを養育していることを周囲にどう言えばよいかわからなかったりする里親も多い。

 「特別な子ども」として認識されることが目的ではないので、ごくあたりまえの家庭生活を送り、養育していることの理解を得る。

(4)子どもが意見や苦情を述べやすい環境
・日常的に子どもが自分を表現しやすい雰囲気をつくり、自分の思いをいったん受け止めてもらえる安心感や養育者との関係を確保することが

 養育の要であることを、養育者が理解する。

・併せて、子どもが相談したり意向を表明したりしたい時に相談方法や相談相手を選択できる環境を整備しておく。

 また、そのことを子どもに伝え、子どもが理解するための取組を行う。

・子どもの側からの苦情や意見・提案に対しては、迅速かつ適切に対応する。

・子どもの希望に応えられない場合には、その理由を丁寧に説明する。

 

(5)体罰の禁止
・体罰は、子どもにとっては、恐怖と苦痛を与えるものであり、ある行為を止めさせる理由を教えることにはならない。

・体罰はある行為を止めさせる即効性のある方法であるが、体罰という方法では、理由があれば力で他者に向かってよいことを結果として教えることになってしまう。

 また、子どもに自己否定感を持たせることとなる。それらの理由から、体罰がなぜ養育の方法として適切でないかを理解する。

・養育者はいかなる場合においても体罰や子どもの人格を辱めるような行為を行わない。

 体罰の起こりやすい状況や場面について、研修や話し合いを通して、体罰を伴わない養育技術を習得することも大切である。

 

(6)被措置児童等虐待対応
・子どもが里親家庭やファミリーホームでの生活に安定した頃に起こる試し行動や退行による行動、思春期の反抗など様々な行動に養育者は戸惑いながらも、

 対応する経験を重ねていくことで子どもとともに成長していく。

・しかし、時に子どもの行動が激しくなり、養育者の対応の限界を超えることがある。

 子どもも養育者も行き詰まった上での不適切な対応が、被措置児童等虐待に結びつくことを理解する。

・体罰や子どもの人格を辱める行為、子どもに対する暴力、言葉による脅かしなどは不適切なかかわりである。

 子どもを大切に養育したいという思いが先行し、しつけから逸脱することがないようにする。

・被措置児童等虐待防止のもつ意味とそのための取組について、十分に認識し、養育者のみならず、実子による受託した子どもへの虐待、

 受託した子ども間の暴力等も想定した予防体制が必要である。

・養育者も一人の人として不適切な対応をすることもある。そうした場合、子どもがそのことを表明したり、

 子どもから第三の大人など他者に伝えることはできるし、伝えてほしいなど、養育者が子どもに説明する。

・里親家庭やファミリーホームが密室化しないための、第三者の目や意見を取り込む意識を持ち、工夫する。

 

4.関係機関・地域との連携
(1)関係機関等との連携
・子どもの最善の利益を実現するために、児童相談所や関係機関と連携し、子どもや家族の情報を相互に提供し、共有する。

 未成年後見人がある場合にも、連携し、情報を共有する。

・乳児院、児童養護施設、児童家庭支援センター等の施設は、地域の社会的養護の拠点であり、里親支援の役割も持つことから、

 里親等は、社会的養護の担い手として、施設等と良きパートナーシップを構築し、連携する。

・施設との関係を活かすには、施設側の里親理解、里親側の施設理解がともに必要である。

・施設の里親支援専門相談員は、児童相談所の里親担当職員等とともに、里親等の家庭訪問や、相談への対応、レスパイトの調整など、

 施設機能を活かして里親等の支援を行う。

・ファミリーホームは、地域における社会的養護の一つの拠点として存在する。

 子どもたちが地域の子どもとしてあたりまえに生活することは、地域の子どもにとっても大切である。

・里親やファミリーホームが、課題の多い子どもを受託し、専門的な支援を行う場合には、地域にある社会資源を活用し、

 また、支援を得るため、関係機関等と特に密接に連携することが必要である。

 

(2)地域との連携
・社会的養護を必要とする子どもの養育に対して地域の人々の理解を得るために、子どもと地域との交流を大切にし、

 コミュニケーションを活発にする取り組みを行うなど、養育者の側から地域への働きかけを行う。

・ファミリーホームでは、必要に応じ、ボランティアを受け入れる場合もあるが、実子や受託している子どもと同世代や、

 子どもが学校などで関係のある人材によるボランティアの受け入れには配慮する。

 

5. 養育技術の向上等
(1)養育技術の向上
・養育者らは、子どもの養育・支援及び保護者に対する養育に関する助言や支援が適切に行われるように、

 研修等を通じて、必要な知識及び技術の習得、維持及び向上に努める。

・社会的養護に携わる者として、養育者一人一人が課題を持って主体的に学ぶとともに、地域の関係機関など、

 様々な人や場とのかかわりの中で共に学び合い、活性化を図っていく。

・研修などの場で養育者が「できていない」ことを開示できる安心感を確保する。

・ファミリーホームでは、主たる養育者は、養育者だけでなく補助者についても、資質向上のため研修会等への参加の機会を設ける。

(2)振り返り(自主評価)の実施
・養育者らは養育のあり方をより良くしていくためには、できていないことや課題の認識とともに、養育の中ですでにできていること、

 子どもに表れているよき変化等もあわせてとらえ、多面的に振りかえっていくことが必要である。

・ファミリーホームでは、運営や養育内容について、自己評価、外部の評価等、定期的に評価を行う。養育者だけなく、

 子どもも相談できる第三者委員をを置くことは、ファミリーホームの養育の質を高める方法である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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