社会的養護とは・里親制度

FOSTER CARE SYSTEM

社会的養護とは

WHAT IS SOCIAL CARE

社会的養護とは、保護者のない児童や、保護者に監護させることが適当ではない児童を、公的責任で社会的に養育し、保護するとともに、養育に大きな困難を抱える家庭への支援を行うことです。 社会的養護は「子どもの最善の利益の保障」及び「社会全体で子どもを育む」ことを理念として行われ、大きく「施設養護」と「家庭養護」の2つに分けられます。

施設養護

  • 乳児院
  • 児童養護施設
  • 情緒障害時短気治療施設
  • 児童自立支援施設
  • 小規模グループケア(ユニットケア)
  • 地域小規模児童養護施設
家庭養護

  • 里親制度
  • 小規模住居型児童養育事業(里親ファミリーホーム)
  • 養子縁組・特別養子縁組制度

日本の社会的養護の現状

CURRENT SITUATION OF SOCIAL CARE IN JAPAN

日本全体で、社会的養護の元に暮らすこどもは約5万人に上り、こうした子どもたちは、児童相談所や一時保護所などを経て、
児童養護施設や里親など社会的養護の元での暮らしを始めます。
日本の社会的養護の現状

障害等のある児童の増加

里親・児童養護施設等に措置されている児童のうち、約6割が虐待を受けた経験を持っています。また、児童養護施設に入所している児童のうち、障がい等のある子どもの割合が急増しているという現状があります。虐待と障がいの因果関係は明確ではありませんが、生育環境による影響も無視できないと考えられています。

社会的養護を必要とする児童においては、障害等のある児童が増加しており、児童養護施設においては28.5%が、障害ありとなっている。

障害等のある児童の増加

ADHD(注意欠如多動性障害)については、平成15年より、広汎性発達障害およびLD(学習障害)については、
平成20年より調査。それまではその他の心身障害へ含まれていた可能性がある。

乳幼児に親やそれに代わる特定の大人との愛着を形成することは、情緒の安定はもちろん、その後の人格形成にも大きな影響を及ぼします。
社会的養護に関する国際的なガイドラインである国連総会決議「児童の代替的養護に関する指針」においても、より家庭的な状況において養育されることが望ましい旨、明記されています。

2009年12月 国連総会会議
「児童の代替的養護に関する指針」

  • 第12条
    「非公式の養護を含め、代替的養護を受けている児童に関する決定は、安定した家庭を児童に保障すること、及び養護者に対する安全かつ継続的な愛着心という児童の基本的なニーズを満たすことの重要性を十分に尊重すべきであり、一般的に永続性が主要な目的となる。」
  • 第22条
    「専門家の有力な意見によれば、幼い児童、特に3歳未満の児童の代替的養護は家庭を基本とした環境で提供されるべきである。この原則に対する例外は、兄弟姉妹の分離の防止を目的とする場合や、かかる代替的養護の実施が緊急性を有しており、又はあらかじめ定められた非常に限られた期間である場合であって、引き続き家庭への復帰が予定されているか、又は結果として他の適切な長期的養護措置が実現する場合であろう。」

出典:厚生労働省ウェブサイト

しかし、日本の社会的養護の現状は、上記にも示したように要保護児童のうち約9割が児童養護施設や乳児院といった「施設養護」に措置されており、里親など「家庭養護」は諸外国と比較しても、とても低い水準となっています。

諸外国における里親等委託率の状況

諸外国における里親等委託率の状況

各国の要保護児童に占める里親委託児童の割合

制度が日本と異なるため、単純な比較はできないが、欧米主要国では、概ね半数以上が里親委託であるのに対し、日本では、施設:里親の比率が9:1となっており、施設養護への依存が高い現状にある。

アメリカでは、年間12万組もの養子縁組が行われています。

  1. 里親先を選ぶ主導権は「実親」にあり情報交換の場も多く用意されている。
  2. 新しい育て親の家と実親との家の行き来が可能。
  3. 里親制度の認知度も高く、利用する親も多い。
  4. またサポートする民間団体の活動も盛んです。

※「家庭外ケア児童数及び里親委託率等の国際比較研究」主任研究者 開原久代(東京成徳大学子ども学部) (平成23年度厚生労働科学研究「社会的養護における児童の特性別標準的ケアパッケージ(被虐待児を養育する里親家庭の民間の治療支援機関の研究)」) ※日本の里親等委託率12.0%は、平成22年度末(2011年3月末) ※里親の概念は諸外国によって異なる

社会的養護の将来像

THE FUTURE IMAGE OF SOCIAL CARE

上記のような現状を踏まえ、国は以下のように今後の社会的養護の在り方(将来像)について示しています。

社会的養護の整備量と将来像

日本の社会的養護は、現在、9割が乳児院や児童養護施設で、1割が里親やファミリーホームであるが、これを今後、十数年かけて以下のような姿に変えていく。

  1. 概ね3分の1が、里親及びファミリーホーム
  2. 概ね3分の1が、グループホーム
  3. 概ね3分の1が、本体施設
  • 現在 施設9割、里親1割
  • 将来像 それぞれ概ね3分の1に

施設の小規模化と家庭的養護の推進

社会的養護が必要な児童を、可能な限り家庭的な環境において安定した人間関係の下で育てることができるよう、施設のケア単位を小規模化し、里親やファミリーホームなどを推進しています。

里親制度とは

WHAT IS FOSTER CARE SYSTEM

日本の社会的養護は「施設養護」と「家庭養護」に分類されます。
さらに、「家庭養護」は制度上、大きく「養子縁組」「里親」「里親ファミリーホーム」の3つに分けることができます。

養子縁組制度

養子縁組とは、親子関係のない者同士を法律上親子関係があるものとすることです。「普通養子縁組」と「特別養子縁組」の2つがあります。

普通養子縁組
普通養子縁組とは、養子が実親との親子関係を存続したまま養親との親子関係をつくるという二重の親子関係となる縁組のことをいいます。
特別養子縁組
特別養子縁組とは、養子が戸籍上も実親との親子関係を断ち切り、養親が養子を実子と同じ扱いにする縁組のことをいいます。

養子縁組制度の主な違い

項目 普通養子縁組 特別養子縁組
名称 普通養子 特別養子
成立 養親と養子の親権者と契約 家庭裁判所に申立て審判を受けなければならない
親子関係 実親、養親ともに存在 実親との関係消滅
戸籍の記載 養子・養女 長男・長女
養親の離縁 認められる 原則できない
養子の年齢 制限なし 6歳未満
相続権 実親・養親の両方に相続権がある 実親の相続権は消滅
里親制度

里親制度とは、家庭での養育が困難又は受けられなくなった子どもに、一般的な家庭環境の下での養育を提供する制度です。家庭での生活を通じて、子どもが成長する上で極めて重要な「特定の大人との愛着関係」の中で養育を行うことにより、子どもの健全な育成を図る制度です。里親制度は、いくつかの種類に分類されます。

  • 里親制度
  • 里親制度
養育里親
  • 様々な理由により、親子が一緒に生活することが難しい子ども、あるいは生活させることが適切でないと認められる子どもを保護者が子どもを引き取れるようになるまで養育する里親です。子どもが社会で自立できるまでの間、養育することもあります。
専門里親
  • 虐待などにより、心に癒さなければならない傷を受けた子どもなどを専門的に養育する里親です。
  • 現に里親であって国が定める研修を修了している等、一定の条件を満たした者が養育を行います。
親族里親
  • 子どものおじいさん、おばあさん、おじさん、おばさんといった3親等内の親族が、その子どもに限って里親となる場合です。
  • 実父母の死亡、行方不明、拘禁などやむを得ない事情がある場合に限定されます。
養子縁組を希望する里親
  • 養子縁組を希望し、それを前提として子どもを養育する養子里親です。
短期里親
  • 保護者の入院などにより一時的に養育できなくなった場合や、1年以内の期間を定めて子どもを養育する里親です。
  • 週末や夏休みなどを利用して施設に入所している子どもをホームステイのような形で養育する季節・週末里親もひとつの形です。
種類 養育里親 養子縁組を希望する里親 親族里親
種類 要保護児童

次に揚げる要保護児童のうち、都道府県知事がその養育に関し特に支援が必要と認めたもの

  1. 児童虐待等の行為により心身に有害な影響を受けた児童
  2. 非行等の問題を有する児童
  3. 身体障害、知的障害又は精神障害がある児童
要保護児童

次の要件に該当する要保護児童

  1. 当該親族里親に扶養義務のある児童
  2. 児童の両親その他当該児童を環に観護する者が死亡、行方不明、拘禁、入院等の状態となったことにより、これらの者により、養育が期待できないこと
里親ファミリーホーム

  • 里親ファミリーホーム
  • 里親ファミリーホーム
  • 里親ファミリーホーム
小規模住居型児童養育事業(里親ファミリーホーム)とは
  • 厚生労働省が定めた第二種社会福祉事業で「小規模住居型児童養育事業」を行う住居を「ファミリーホーム」といいます。
  • 「ファミリーホーム」は、家庭環境を失ったこどもを里親や児童養護施設職員など経験豊かな養育者がその 家庭に迎え入れて養育する「家庭養護」です。
  • 事業という言葉がつきますが、あくまでも養育者の家庭の中で、5~6人のこどもを預かり、こども同士の相 互の交流を活かしながら、基本的な生活習慣を確立するとともに、豊かな人間性及び社会性を養い、将来自立した生活を営むために必要な知識及び経験を得ることに主要な目的があります。
里親ファミリーホームはいつから始まったか
  • ファミリーホームは、平成20年の児童福祉法改正により「小規模住居型児童養育事業」として全国的に実施されました。
  • それ以前から里親型のグループホームとして、いくつかの都道府県等で行われていた事業を国が、新たに里 親制度と並ぶ家庭養護の制度として法定化したものであり、 里親のうち多人数を養育するものを事業形態とし、相応の措置費を交付できる制度としたものです。里親ファミリーホーム開設要件
  • ファミリーホームは、法人または個人が事業者として行うことができますが、この事業は、養育者の住居において、複数の委託児童が養育者の家庭を構成する一員として行わなければならないため、養育者には以 下のような要件があります。

■ 児童福祉法第34条の20第1項各号のいずれにも該当しない方であって、次の各号のいずれかに該当する方。

(1)養育里親として2年以上同時に2人以上の委託児童の養育の経験を有する方
(2)養育里親として5年以上登録している者であって、通算して5人以上の委託児童の養育の経験を有する方
(3)乳児院、児童養護施設、情緒障害児短期治療施設又は児童自立支援施設において児童の養育に3年以上従事した方
(4)都道府県知事が前各号に掲げる者と同等以上の能力を有すると認めた方。

全国の里親ファミリーホーム設置目標
  • 平成26年3月末現在、全国にあるファミリーホームは223か所です。(厚生労働省資料より)
  • 国は将来的には全国で1000か所を目標にしています。

里親委託が進まない理由

REASON WHY FOSTER CONSIGNMENT DOES NOT ADVANCE

日本の家庭的養護(特に里親家庭)は、諸外国に比べて非常に少ない現状があります。
要保護児童が行き先は、施設養護が9割、家庭養護が1割となっています。

  1. 一時保護所に入った子どものその後(2012年)
  2. 里親委託率の国際比較(2010年)

里親委託率の推移

里親制度は、家庭的な環境の下で子どもの愛着関係を形成し、養護を行うことができる制度です。
里親委託率は、平成14年の7.4%から、平成25年3月末には14.8%に上昇しています。

年度 児童養護施設 乳児院 里親等 ※1 合計
入所児童数(人) 割合(%) 入所児童数(人) 割合(%) 委託児童数(人) 割合(%) 児童数(人) 割合(%)
平成14年度末 28,903 84.7 2,689 7.9 2,517 7.4 34,109 100
平成15年度末 29,214 84.0 2,746 7.9 2,811 8.1 34,771 100
平成16年度末 29,750 83.3 2,942 8.2 3,022 8.5 35,714 100
平成17年度末 29,765 82.5 3,008 8.4 3,293 9.1 36,066 100s
平成18年度末 29,808 82.2 3,013 8.3 3,424 9.5 36,245 100
平成19年度末 29,823 81.8 2,996 8.2 3,633 10.0 36,452 100
平成20年度末 29,818 81.3 2,995 8.2 3,870 10.5 36,683 100
平成21年度末 29,548 80.8 2,968 8.1 4,055 11.1 36,571 100
平成22年度末 28,903 79.9 2,963 8.1 4,373 12.0 36,450 100
平成23年度末 28,803 78.6 2,890 7.9 4,966 13.5 36,659 100
平成24年度末 28,233 77.2 2,924 8.0 5,407 14.8 36,564 100

里親等委託率

※1 「里親等」は、平成21年度から制度化されたファミリーホーム(養育者の家庭で5〜6人の児童を教育)を含む。ファミリーホームは、平成24年度末で184ヶ所、委託児童829人。多くは里親、里親委託児童からの移行。
※2 平成22年度は福島県分を加えた数値。(資料)福島行政報告例及び家庭福祉課調べ(各年度末現在)

里親委託を推進する上での課題として、以下のような点が挙げられています。

  • 里親制度
  • 里親制度

社会的養護の現状について(参考資料)より(厚生労働省)

登録里親確保の問題
  • 里親制度の社会的認知度が低く、新規委託可能な登録里親が少ない。
  • 里親の希望する条件(性別、年齢、養子可能性など)と合わない。
  • 信頼関係の構築が難しく、児童相談所として信頼できる里親が限られる。
  • 里子の万一のトラブルや事故に遭遇したときの里親としての責任が心配で、登録申請に至らない等
実親の同意の問題
  • 里親委託に対する実親の同意を得ることが難しい。
    (施設なら同意するが、里親の場合同意しない。)等
児童の問題の複雑化
  • 発達障害など児童が抱える問題が複雑化してきており、里親への委託が困難なケースが増えている等
実地体制、実地方針の問題
  • 児童福祉司が虐待対応業務におわれていることから、里親委託への業務に十分に関われていない。
  • 里親専任担当職員が配置されていないなど、里親を支援するための体制の整備が十分でない。
  • 未委託里親の状況や里親委託を検討出来る児童の情報など、県内全児相での情報共有が必要。
  • 職員の意識の問題として、失敗を恐れると委託に消極的になり、無難な施設を選択するなどの問題。等

また、全国児童相談所長会の報告書においても、以下の理由が挙げられています。

里親委託が進まない理由
実親・親権者が里親教育を望まない (同意しないを含む) 78.4%
里親の要望と子どものニーズが一致しない 41.6%
里親委託の方が望ましいと考えつつも、養育経験の少ない里親希望者が多く、児童相談所の職員が消極的になる 38.4%
養子縁組を望んでいる里親登録者が多い 30.5%
里親委託の方が望ましいと考えつつも、委託後のサポートが十分にできない現状により、児童相談所の職員が消極的になる 26.3%
里親への支援体制が不十分である 22.6%
市民に社会的養育に参加することへの負担や困難を予想する思いが強い 21.6%
市民に子どもの社会的な養育に参加しようという意識・関心が乏しい 18.4%
市民に血縁関係のないものを家庭に迎え入れることへの抵抗感がある 7.4%
里親へ支払われる委託費が不十分である 2.1%
児童相談所の職員が、施設入所のほうが望ましいと考えているから 2.1%

出典:全国児童相談所長会「児童相談所における里親委託及び遺棄児童に関する調査」報告書

我が国として、里親委託は目指すべき方向ではあるものの、上記の課題等により、迅速に移行を推進できる状況にはないと言えます。被虐待児や高年齢児に対する養育の難しさなどの課題も複雑に絡み合い、家庭養護においても「専門性」が求められる時代になりつつあります。そうした側面からも、専門職が配置されている「施設養護」には一定の役割があり、それは今後も重要なものでありつづけるでしょう。

子ども一人ひとりの状況に応じて最適な環境を提供できるよう、施設養護・里親委託の両者が協力し合い、高め合うことが必要です。

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